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ジョーカーのMSTshoziのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
アメコミ映画の皮を被った社会派映画かと思っていたものの、そのテーマも、構成もまたジョーカー。これに尽きる映画だった。
貧富を代表に社会的格差がベースにありつつ、誰が持ちうる、憤りと哀しみのなかに生きるアーサーに共感していくわけだが、それを持って何をしようというのでもない。そこから巻き起こる暴動を何かの政治的なメッセージにしてやろうという気もない。事象から想起しうるものを、ジョーカー自信が明確に否定する。

そんな少し昔のこういったもの、人の善と悪、笑いの幸福と狂気、表裏だの、境界線を描いてみたかったんだろう。スコセッシしたかったんだろう。
ただ何かを押し付けない。その渾然一体を顕在化させる。図ってか図らずしてか、これはジョーカーのキャラクタと一致している。

その中でアーサーの虚実も分かり易くしめしてくれており感情移入を容易にしている。その果てに、わかりやすいラストの悪の化身としての復活誕生を観て、わかりやすいブルースのライジングを観て、ヒーロー映画好きとしては胸が躍る。

そんなベタベタに上がったテンションをも、散々時間をかけて得た感情移入をも一笑に付すラスト。

導入に大画面いっぱいに示されたタイトル。まさにこの映画そのものがジョーカーだった。
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