かずや

ジョーカーのかずやのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

超能力等の突出した技能を持たない、社会的に見て圧倒的弱者がここまで恐ろしく感じるのは初めての経験だった。
自分にとって1番恐怖を感じるのは人間の狂気を垣間見た時なのだなと思った。

マレーの番組に出て、病気の母を介護していると語り、それが観客やマレーから称賛されている自分を妄想している場面から、アーサーはそんな自分に誇りを感じていたのだろうと思った。

「put on a happy face」は母親がアーサーにいつも言っていた言葉であると独白があったが、ジョーカーとして楽屋の鏡にその言葉を書いた時にようやくその言葉の本意がわかった気がした。
母親がアーサーに言ったのはネグレクトの事実を正面から受け入れたくないから、精神的な疾患のある自分でも、身寄りのない子供を自分の子供として笑顔にして育てることが出来ていると思い込みたい、信じたいという暴力的なまでの自己愛に満ちた考えであり、彼女はアーサー自身ではなく彼に被せた「happy face」だけを見ていたんだろうなと思った。だから、母親はアーサーのことをハッピーと呼んでいたんだろう。
駅のホームでジョーカーはピエロの仮面をゴミ箱に捨てたが、それは母親が被せた「happy face」を捨てた事を意味しているのだろうか。
楽屋の壁とかではなく、自分が映る鏡にその言葉を書いたのは仮面を捨てた自分への皮肉でもあり、仮面などなくても「happy face」をしてやるという決意の意味があると思う。
かずや

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