ハイブリッジ

ジョーカーのハイブリッジのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.9
見てはいけないものを、見て、聞いて、想像させられてしまった

主人公が、本作のように、自分の内側から壊れていき、善悪が分からなくなり、見ている側もその区別がつかなくなるような映画は多数あります。

「タクシードライバー」、「アメリカンサイコ」、少し見方を変えれば、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」など

特に、本作に近いのは「アメリカンサイコ」だと感じました。皮肉にも主人公は、ノーラン監督のバットマンシリーズでバットマンを演じた、クリスチャンベイルですね。笑

ヒーローには悪役がいるように、ジョーカーにも敵がいました。しかしジョーカーの恐ろしいところは、その敵を社会にターゲットしているところだと思います。誰か、ではなく、取り巻く環境、そしてそれを作る富裕層や権力者たち、それら全てが悪であり、自らの敵なんです。

世界を変えれば、自分は苦しまなくて済む、そのためなら何でもする。その点で言うと、「アメリカンサイコ」は、アメリカ社会を恨んでいましたが、自分はお金もあるし、家もあった。人々が無関心だったことに対し、自分の存在意義を見出せなかったのだと思います。

自分を苦しめる悪である社会を変えたいジョーカーと、自分や人々に無関心な社会を変え、存在意義を見出したいアメリカンサイコは、入口は違うけれども、出口は同じように感じます。



ラストシーンは正直びっくりしました。そういう方向に持っていくのか、と意外でした。

でも、そのラストシーンがあったからこそ、見てはいけないものを見てしまった気がするし、笑っていいものなのかも分からなくなってしまった。自分がどの立場から考えるべきなのか、善悪の区別も同時に分からなくなってしまいました。

それほど複雑で、どこか本当は全てを見通しており、自分の存在意義を知らせる計画を持っているかのように感じさせるジョーカーは、間違いなく最強クラスの悪役です。

また見たいです。
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