建野友保

ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーションの建野友保のレビュー・感想・評価

4.4
ジョーン・ジェットが2015年に「ロックの殿堂入り」すると知った時、正直、「どうして?」と思った。そんなに多大な功績を残した人だったのだろうか?
ザ・ランナウェイズ(1975〜1979年)はリアルタイムで体験していたし、来日時の喧噪も、来日公演の音源がライブ盤としてリリースされたことも、シェリーが「激写」に掲載されたことも知ってはいた。あっという間に解散してしまい、一発屋のような一時期の熱狂に終わったと思い込んでいた。頻繁にラジオなどで流れて耳馴染みのあった「アイ・ラブ・ロックンロール」という曲(1982年のヒット)を(元・ザ・ランナウェイズのギタリストだった)ジョーン・ジェットが演奏しているらしいことは、ずいぶん後年になってから知ったが、そんな「点」の情報が全て一本の「線」に繋がったのが、この作品だった。
メジャーレーベルにへつらって財を築くことよりも、ロックンロールにひたむきで、ロックンロールに人生を捧げ、生きづらさを抱えていた多くの若手ミュージシャンに光を当て、彼ら・彼女らから慕われたジョーン・ジェット。いくつもの悲しい物語には素直に涙したし、彼女の人となりを表すエピソードにも感動した。知らなかった。本当に知らなかった。この映画を観ることができて心から満足している。
これほど「ロックの殿堂入り」にふさわしい人はいないかもしれない。そう感じた上で観たニルヴァーナ曲のパフォーマンスには、嗚咽が止められなかった。ジョーン・ジェット、あなたがいてくれて、ありがとう。
(叶うならば、この作品にだけスポットを当てたパンフレットが欲しかった。いくつもの知らないバンドがいた。いつか深掘りしてみたい。)
建野友保

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