あかり

長いお別れのあかりのレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
4.5
もともと赤の他人同士だった二人がある日を境に夫婦になり、子供を持ち『家族』と呼ばれるものになって、一つ屋根の下で暮らすことって本当に不思議なことだなあと感じました。お父さんがそれ以前どんな人だったかははっきりとは描写されないものの、娘たちや周りの人たちの反応、お父さんの部屋を映すだけで伝わってくるのがじんわりきた。
お父さんとお母さんが理想の夫婦すぎて。身内が認知症になってしまった時に正しい接し方なんてないのかもしれないけど、一番理想的な対応の仕方ですよねきっと。否定するわけでもなく、忘れられてしまっても毎回自己紹介。そんな中で『両親に正式に紹介したいと思う、きてくれますね?』と不意に言われるのは本当に嬉しかったろうな。お茶目で何事にも動じなそうなお母さんが堪えきれずに目を潤ませるのにはもれなくこちらの目からも涙が溢れました。
娘たち二人もそれぞれが抱える問題もありつつ、お父さんに寄り添い、認知症になったお父さんに当たり前のように助言を求めたり泣きながら愚痴をこぼすのが本当に愛おしかった。ぎゅーーーって感じだった。メリーゴーランドに乗って、傘をさす家族の姿を見つけて、本当に幸せそうに微笑むお父さんの家族愛。
もし、身近な人が認知症になった時、ボケたって、誰か分からなくなったって、何か感じるものがあってほしい。ふとした瞬間に思い出すものがあってほしい。全ての人が支える立場にも支えられる立場にもなり得るこの時代に、この映画を観て、またひとつ自分の人生の理想を見つけることができました。
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