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十二人の死にたい子どもたちのMEのレビュー・感想・評価

4.2
「世界に未練なんて何にもない」


こんなクソな世界なんて
消えてしまえばいい。

どうせどこにも行けない僕の世界も

大好きなあなたがいない私の世界も

傷つけられるだけの僕の世界も

偽りだらけの自分を生きる私の世界も

人の世界を奪って生きているこんな世界、

存在している価値のないこんな世界、

誰かに奪われてしまうなら

忘れられてしまうなら

世界の記憶にずっと残るように

自らの意思で世界を終わらせてやる。

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この作品は学校っていう狭い世界で生きている子供たちのお話だということを忘れずに見て欲しいです。大人たちからみるとちっぽけなしょうもない自殺理由だと思うかもしれませんが、20年も生きていない子どもたちの生きている世界は、大人たちからみるとちっぽけなその世界が全てで、ほんの少しの知識が全て。彼ら彼女たちは、真剣に悩んで、考えてこの集いに集まっている。「そんな理由で」この作品に対してそんな感想を抱いた人たちは、現実に「そんな理由」で命を絶ってしまう子どもたちがいることを知ってほしい。私たちから見ればそんな理由でも、狭い世界で生きている子どもたちにとっては、とてつもなく大きな理由で、子どもたちが生きている小さな世界では大きな大きな理由なのです。低評価をされている人が多いですが、わたしは、不安定な大人になりかけている子どもたちの心情をとても繊細に描いていると思いました。同じ死にたい12人だけど、みんなそれぞれに理由があって、別々の世界に住んでいる。12人がそれぞれに話し合うことで、自分がこれまで全てだと思っていた世界以外の世界の端っこに気づいたのではと思います。自分の世界が真っ黒だということに絶望して生きることをやめてしまおうと思っていたけど、自分の知らない世界がほんの少しの光として差し込んだ。もしかしてまだ生きていく理由があるかも知れない。と気づくそんな未来ある子どもたちのお話だと。そんなふうに見れば大人である人は何とも言えないそんな感情になるのではと思います。面白くないかもしれないけれど、なんとなく、面白くないとは言えない、そんな作品なのではないかと思いました。
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