NG

ホットギミック ガールミーツボーイのNGのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます


いままでみた映画でいちばんすきかもしれない。
多感な時期の無防備で剥き出しな心が痛くて深夜に大泣きしてしまった。きっと理解できないひとは一生理解できないだろうし、理解できない側の人生の方幸せだとも思うけど、刺さるひとには強烈に刺さる。とんでもない映画。
こういう衝撃的な出会いがあるから映画っておもしろい。
登場人物全員きもちわるくて痛くて最初の30分で見るのやめようかと思ったけど、ちゃんと見てよかった。

わたしはどうしても梓や『チワワちゃん』のヨシダのように自覚的に他人を傷つけているのに誰よりも深く傷ついているどうしようもなく愚かで、純粋なキャラクターに感情移入してしまう。
愛されなかったにんげんは愛される方法も他人を愛する方法も知らないし、永遠の愛を切望する一方で永遠の愛なんて存在するはずもないと諦めてもいる。
だから「心ってもっと曖昧なものじゃないの?永遠に愛してるって思っても、次の瞬間…いらなくなっちゃうんだ」
じぶんがほんとうはどうしたいか、愛が、恋が、わからない。

「もう一生俺のこと許さなくていいからね」に許されないことで許されたいきもち、じぶんでじぶんを許せないきもち、憎しみでいいから一生じぶんのことを覚えていてほしいという願望が混ざりあっていて切なくなる。
にんげんってどうしてぜんぶ終わったあとじゃないと大切なことに気づけないんだろうね。

「自分にはこの人しかいないんだって、最初から、わかってたらいいのにね」

「初恋って、ずっと過去形にならないんだ」

母の不倫と死、ほとんど家にいない父。新しい家族。
壊れた初恋、失敗した復讐。満たされない心。

梓の「じゃあ教えて?俺はどこに行けばいいのかな?行くとこなんか、もうないっつーの」に共感しすぎて胸が痛い。

じぶんの家にいてもどこか他所の家族と一緒に暮らしているようなアウェー感。家は、家族はじぶんの居場所じゃない。それらしく振る舞って他人とそれなりに仲良くすることはできても、じぶんの心の拠り所、居場所にできるほど他人を信用できない。

だから、リナが初に「不遇な人の気持ちがわからないんですね。家族みたいにお互い励まし合って、やっとふつうの人のスタートラインなんです、私たち。初さんは恵まれてますよ。まともなお母さんとお父さんに育てられて、大事に、大事に、愛されて。人の心がわからない人って、よっぽどそういう人のほうなんですよね」と言いたくなるきもちもよくわかる。
初みたいに恵まれたにんげんは恵まれていることにも気づかず、それを「ふつう」のことのように語るから残酷だ。

そんな初の無知や無意識な傲慢さが滲む言葉とは反対に橘亮輝くんの言葉(「可愛い・可愛くない問題は、お前は考えなくていい。俺が提言する。よって条件は満了。以下、証明不要。それで決定。ほかのヤツが言う可愛い・可愛くないに振り回されんな」、「そもそも大前提として言うけど、お前がこの世に生まれた時点でもう選ばれてるってことなんじゃないの。お前、なんのために生まれてきたの?誰かに選ばれることなんて待つなよ。あとは、お前が!何を選ぶかだけだろ」、「俺はお前のこと汚いだなんていままで1回も思ったことないから。そんなの事実じゃない。世界認識に誤謬があるまま悲観すんな」)はズタズタの心にやさしくしみる。言葉を尽くして存在を肯定してくれる心強さよ。亮輝くんの言葉をお守りにして持ち歩きたい。
「文化圏違ったら養子なんて別にふつうだし」、「血なんて混ぜればいい。お前の血と混じればまだマシになるよ」なんて発想わたしには1mmもなかったからハッとしたし、心が軽くなった。
亮輝くんの言うとおりバカは生きづらくて大変だ。
NG

NG