ウスバカゲソウ

ストレイ・ドッグのウスバカゲソウのレビュー・感想・評価

ストレイ・ドッグ(2018年製作の映画)
3.5
生ける屍のようなニコール・キッドマンのビジュアルが凄まじい。
とにかくニコール・キッドマンが痛めつけられる。
『ドライブ』や『ボーダーライン』を彷彿とさせる、トレンドを押さえたハードなクライムドラマ。

座組やプロットを見るとマストな感じだが割りと賛否両論。
主人公のキャラ造形やグレーな感じ、カタルシスの無さ、ツイストなんかが原因か。
監督の『不吉な招待状』が秀作だったので期待していたら今回もなかなか良かった。
ジワジワと追い詰められ、弱っていく。
のた打ち回り、這いずり、足掻く。
なけなしの力と魂で掴みとろうとする姿は痛々しくも美しい。
インフルエンザにかかりながら撮影したりしたキッドマン(良いのか?)の凄み。
残り火だけで動いている。
キッドマンの迫力は元より、セバスチャン・スタンのナイスガイさ、『キャビン』のテキーラおじさんなどキャストはみんな素晴らしい。
マクネイリーの絶妙さ。
やはり良いやつ。
『ボーダーライン』的スコアで緊張感マックスな強盗場面が白眉。
突発的な暴力。
こういう所はしっかり盛り上がるのが監督の魅力。
スローの使い方や省略なんかも上手かった。

正しく生きられなかった不器用な人間の魂が焼き付いている。
娘との細やかな和解と最後に見る情景の儚い美しさ。
辛く苦い味わいだが、捨て置くことのできない一作。