shimiyo1024

アド・アストラのshimiyo1024のレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.9

ジェームズ・グレイ、ロストシティZしか観てないが、それ観た時に感じた、癖のないようで癖のある画作り、タイム感覚における言語化しづらい個性が本作にも同様で、今作は大衆向けビッグバジェットSF/コアSFファン向けSF、両方の意味において決して"王道"などではないと思った、併せて改めて日本における宣伝、予告の勝手なミスリード、脚色ひどいなと思ったが

(生涯ベスト級の)インターステラーのホイテマがそのスキルを活かしたということで映像表現面での感慨はもちろん比肩するものはあった
マックスリヒター(ニルスフラムの名前もあった)の音楽も良し

で、話や演出がやっぱり普通ではなくて、ロストシティZでも感じたような同様の、ドキュメンタリーと行かないまでも一歩引いて歴史のパーソナルな一部を眺めるような冷静な肌ざわりがあって、テーマも別に壮大なところにあるんじゃなく、ブラピの極めてパーソナルな心理をメインに据え、地球の危機、とはいえ直ちに滅亡とまでは行かない、父の粗相に落とし前をつけにいくという…ウェルメイドを装った、まれに見る奇怪なSFになってると思う

歪といえば…

月面、火星の定期便が、限られた人間向けとはいえ就航する程度に進歩した未来を描いた点、はかなり新鮮味があった
ヴァージンが運行してたり、サブウェイが入居してる月面の空港あたりのリアリズム、まではオッやるね、と期待してたが、以降SFに肝要なリアリティレベルの統一が崩れていき、

月面の素性不明の盗賊の襲撃、チェイスシーンだが(月面開発がある程度進んで、自由経済が回っている程度には定住者がいるとか)具体的にどうなのか描かれないので、バギー狙ったところで(それもバカスカ撃って破壊して)いったいどんな利益が得られるんだ、仮にまだ開発の初期段階ならそれなりに大規模にまとまった施設で集住しなくてはならないだろうから、あんな無法者が月面の僻地に独立して生活することができるのか、あれほどの装備、集団で襲ってくるとわかってるのなら、まして要人護送なら装甲厚めの車両も開発、配備されていて然るべきだろ、というあたり)に始まり、とってつけたような(エイリアン的お約束はお約束で嬉しいが)暴走犬エンカウントイベント発生(検疫的なガイドラインがあって然るべきであんな措置はありえない)、ついにはあまりにファンタジ〜な展開経て、発進直前の船に飛び乗り、図らずも皆殺し、みんなごめん!でも大して葛藤はありません→やることはやって何とか帰るも、正気失ったブラピのやったこと、決して英雄扱いとはならないだろうし観てる側も拍手とはいかない(また隠蔽して英雄とされるのかもしれんが)、そしてブラピは自分を見つめ直せて救済得てよかったねというところにカタルシスがあるにしても、何にせよあまりにもパーソナル…という、歪なところに、感動の落とし所をつかみあぐねる

とかいいつつ、これほどのSF奇作なら、作っていただけただけで有り難いものですから、3.9は差し上げます
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