味コスモ

アド・アストラの味コスモのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
3.5
そこで涙を流すのは完全に野暮だな。だいたい、無重力なら涙は眼球に貼りついて溜まってしまうはずなのに。

主人公を通り過ぎていく「メッセンジャー」の存在がよかった。彼自身メッセンジャーでもある主人公に推進力を与えるひとたち。大佐も所長も「爆発」してくれる。

ブラッド・ピットじゃなきゃ、まともに見られる映画になってなかったんじゃないか。村上春樹の小説の主人公みたいでもあった。イメージソースがおなじだからだろう。

トラがサルと父親に替わった『ライフ・オブ・パイ』でもある。サルからの父…という反復が、物語に奥行きを与えている。が、父のある側面をサルに仮託してしまっている分、父が弱くなる。もちろん、それは狙ってやっていることだろう。

宇宙が舞台なら、生身の自分で他人と向き合うことはできないってことをビジュアル一発で表現できる。じゃあ、宇宙を経ての地上では…? 今年見た『ファースト・マン』と比べてしまうが、『ファースト・マン』のほうが踏み込んでいたし、より切実だ。
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