JIZE

アナベル 死霊博物館のJIZEのレビュー・感想・評価

アナベル 死霊博物館(2019年製作の映画)
3.6
超常現象研究家ウォーレン夫妻が暮らす邸宅を舞台にその地階の呪われた収集品が眠る博物館に保管される事となったアナベルが解き放たれた事で恐怖がふり注ぐ事態の全貌を描いたドールホラー映画‼︎ 初日に字幕で鑑賞。悪霊が集う地下のあの保管室には絶対足を踏み入れたくないほど憎悪や邪念が画面越しにでもハッキリと感じた。まず本作の立ち位置は、死霊館ユニバースに含まれる悪霊人形アナベルを主体とするシリーズ第3弾で、『死霊館(2013年)』の冒頭シーンほぼ直後の出来事が活写されている。具体的に云えば凄くコメディリリーフ的で、アナベルがジブンの元へ選りすぐりの悪霊を呼び寄せているという点でもアナベル版『ナイト ミュージアム(2007年)』じゃないか。おもに"黒い魔犬"や"手探りゲーム"、"銀コインのフェリーマン"などお化け屋敷ムービーとしても多視点でたのしめる一品に仕上がったように思う。特に"シンバル・モンキー"や"侍の甲冑"などコメディに特化させたようなシーンもある。"未来のテレビ"はアレ一本で映画を製作できるような仕掛けだった。端的にユニバースのスピンオフ的な作品かつほぼ前日譚なのは明白だが、クラシカルでコミカルな青春群像をベースに置いている作品内の世界観そのものは一線を画する現代的なアレンジだったんじゃないか。また今回主演を演じたマッケナ・グレイスの精悍な表情であったりホラー映えするような雰囲気は作品のトーンとも合っていた。ベビーシッターとして登場する二人の少女の適度な間隔でトラップにはまる感じもベタ打ち感はあるが盛り上げてくれた。本作はユニバースのほぼ起点を静観かつクラシックに描きつつも、アナベルを囲む邪悪な者たちの隠された恐怖を最大限にまで導きだし、ユニバースそのものの未開のポテンシャルをさらに示唆させる作品に昇華させたと思う。

→総評(ガラスケースを突き破るほどの邪悪な魂)。
総じてほぼアナベル以外にも他の悪霊に活躍の場を設けたアンサンブル映画です。過去作の予習や知識云々というより文字通り"目でみて楽しめる"映画に仕上がったのではないか。映画の冒頭でウォーレン夫妻がアナベル人形を譲り受けそれに連なる帰路の道がたまたま交通止めになってたり夫人が車内で地図を広げる巧妙なシーンの静観な雰囲気など、最初のくだりが一番恐怖度MAXに感じました。また舞台を家内に留まらせるワンシチュエーションで限られた地形を駆使して進行するのでジャンル映画好きにははまる映画ではないでしょうか。怖がらせかたでもゴア描写は一切封印してほぼ破裂音や突飛的な画面の切り替えで驚かしにくるため正直物足りなさはあった。特にこのような事態を招き起こした元凶の人物が裁かれないのは詰めが甘すぎでは。せめて映画的にでも間違いを犯せば天罰がくだるようなシーンを描いてもらいたかった。死者云々より怖がらせる方向に映画内の温度がシフトしてるため肩透かしを食らう部分は多いにあるにはある。主要キャラをほぼ子供たちに絞っているためティーンを意識した作品という印象です。またジュディ部屋にあるクウォーターの万華鏡のような四色に連なるレンズ越しに、アナベルの小さな影がやがておぞましき姿に肥大化する演出は恐怖を感じさせるものだった。今回、監督のゲイリー・ドーベルマンが前作『アナベル 死霊人形の誕生(2017年)』に引き続き本作でも続投している点や先に公開を控える注目作『IT/イット THE END(2019年(予定))』の脚本を務めてるなど、映画ホラー界の住人として重要で今後もますます目が離せない。アナベルを筆頭に悪霊が解き放たれる誰が見ても平均値的に仕上がった快作である。
JIZE

JIZE