たく

優しき罪人のたくのレビュー・感想・評価

優しき罪人(2018年製作の映画)
4.0
すごく良かった!交通事故で両親を亡くした娘が身を明かさず加害者と心の交流を交わしていく話で、喪失からの立ち直りの描き方に泣けた。人の心は白黒に割り切れるものじゃないっていうことを取り返しのつかない罪を題材に描いてて、韓国映画にしては激しい感情表現じゃなく、ヨンジュの主観的なカメラワーク中心の抑制された静かな演出で表してたのが良かったね。

両親の死をきっかけにグレてる思春期の弟の世話を焼く姉のヨンジュが、彼が起こした事件の示談金を払うために交通事故の加害者が経営する豆腐屋に素性を隠してバイトとして雇われるところがスリリング。最初は復讐目的で売上金を奪うつもりで潜入したのが、この夫婦がまあとにかく限りなく優しき人(=邦題)で、ヨンジュがだんだんと本当の娘のような関係になっていく加害者と被害者の図式に「乱れ雲」「若おかみは小学生!」を連想させる。

ヨンジュの行動が最初しっかり者に思えるのがだんだん自分本位に見えてきて、弟に詰問されて思わず本心をもらしちゃうところは怖かったね。終盤でようやく夫婦に身を明かざるを得ないところまできて、奥さんのマリア様のような優しさが敬虔なキリスト教信者だったことに基づくのが裏目に出るのが皮肉。ヨンジュの長回しのラストが原題を象徴しててほんと良かった。泣くのに5年もかかったんだね。
たく

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