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メランコリックのgnspのレビュー・感想・評価

メランコリック(2018年製作の映画)
4.5
「タクシードライバー」のトラヴィスが、正しくない手法で「正しい」人に出会って社会へ踏み出していったらこんな感じかなあ…という物語。


まずもって「東大卒社会経験ゼロニート」という和彦のキャラが最高にチャーミング。会話の噛み合わなさやあまりの素っ気なさに「くー!社会経験無いねぇ!」と感じる一方、ふとかける一言や素振りでナチュラルな育ち・性格の良さが見え隠れするという愛おしい存在。またこれがメガネ外したらなかなか美青年なんだ。ちょっと「孤高の天才」っぽさで岡村ちゃん的なものを感じる。
そんな彼があまりに未知な境遇に陥ってどのように成長していくのかがまず大きな注目ポイント。

そんななかでのキーのひとつが和彦家の食卓。劇中何度も映るここでの会話が、和彦の境遇とともにどのように変化していくか。
最初のところ(銭湯バイト開始前)では、家族は決して見捨ててないんだけど、その優しさが裏目で本人はめちゃくちゃ放置されているように感じてしまっている、とても気まずい食卓が苦しい。

そんな「生き辛さ」をしばし感じる中で、同僚の松本くんの「軽さ」がまた清涼剤にもなるのである。
朝開店前の"掃除"の括りでの「もしかしたらまた連れてきて殺さなきゃかもなので残っててもらえますか(>人<;)」の軽さったらないぜ!でも全然悪意が無いさわやかさ!
「掃除楽になるように頑張るんで」という和彦への気配りも健気でとても良い。なおやってること(ry

でも明らかに自分より「知ってる」、そんな松本くんの存在感が増すことで、和彦が嫉妬を抱くのがまた面白い。
結局誰かに「頼られたい」、「必要とされたい」、そのことで自分の、これまで皆無だった存在意義を見出したかった。
「わかる」と胸に手を当てて考えてしまう。


冴島さんがあまりに都合の良いミューズすぎるのは何だかなあと、思わなくもない。

ただそれも含めて「最後の画が撮りたかった」のかなあと、最終的に思う次第。
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