どらごんいん

メランコリックのどらごんいんのレビュー・感想・評価

メランコリック(2018年製作の映画)
3.0
チャラいけど腕のよい金髪の殺し屋とか、
童貞にとって都合良すぎる女とかが出てくるので、青年漫画みたいな世界観だなと思った。

斬新な死体処理の映画だ、
といわれて『冷たい熱帯魚』のでんでんや、『八仙飯店之人肉饅頭』のアンソニー・ウォンのような異常者の登場を期待してしまうような人は、そんな露悪的なのは出てこないので注意が必要だ。
(これは「実際に起きた事件をモチーフにしています」系の映画ではない!)

肝心の死体処理だが、人体を解体するショックシーンがない。
銭湯の釜に人体をすっぽり収めて燃やすことなどできないだろうから、当然細かく解体する工程があったはずだ。

和彦(皆川暢二)はタイルの血痕ばかりこすっていたが、排水トラップに溜まった内臓物や、燃焼室に溜まる灰はいつ誰が掃除し、どこに捨てていたのか。
(オーナーの東(羽田真)が営業前にやっていた、としたら面白いね。)

コメディと謳っているのに、野暮なことを言うようだが、
やってることの重大さと、実作業の軽薄さとの隔たりがデカすぎて、受け入れがたい。


そこで、こんな展開はどうだろう。

死体を燃やしすぎた為に煙道が詰まり、肝心のお湯がぬるくなって常連客から苦情が来る。
それだと銭湯が営業できないから、後先考えず釜の業者を呼ぶが、
業者が見れば燃料以外の何かを燃やしたことは一目瞭然だ。
焼け残った指環か銀歯に気付いて狼狽する業者。
松本(磯崎義知)は、この罪のない一般人を、殺すのか殺さないのか。

そこから、タイトルに見合った憂鬱な葛藤が生まれただろう。

しかし、お湯は沸き続け、
何か良さげな雰囲気で映画が終わってしまった。

せめて最後の大団円のカットバックで、釜が失火して無人のバックヤードに警報ブザーが鳴る、というような画をいれてくれたら、
「ぬるま湯」とは言えない印象になったかもしれない。

俳優たちの芝居が良いので、観ている最中はそれなりに楽しかったのだが。