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サマー・オブ・84のFMLのレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
5.0
どこで道を間違えたのか、って人は過去を振り返るけど
多分全部正しかったんやと思う。
だって、幸も不幸も生も死もみんな平等に訪れるから。

好きな子と付き合えたら、キスできたら、それで幸せなのか。
好きな子と淡い夏を過ごせば、それが青春になるのか。
子供でも大人でもない時代の、悶々とした感情を思い出す時、
間違いなく"大人"といえる年齢になってようやく、あれは青春やったって苦笑いできる。

でもあの頃、自分で働いて金も稼げなくて、親とかじいちゃんばあちゃんからなけなしの金をもらって、安いメシとかサイフとか買って、しょぼいゲーセンで遊んでた思い出。
好きなのか好きじゃないのかもよくわからず、告白して付き合ったけど
恥ずかしさと強がりでデートすらろくにできず、何も始まらないまま終わっていった恋。
間違いなく俺たちこそが世界で一番イケてると本気で思ってるけど、
門限をほんの少し破っただけで親に怒られてやり場のない怒りを布団とか枕を殴ることで抑えこんでた日々の矛盾
流行りのJPOPを爆音で流しながら、集団でチャリンコぶっ飛ばしてたクソッタレのガキども

これは俺の実際の思い出で、こんな思い出話を誰かとしたことはないけど
同じような暑苦しい夏を体験したことのある人もおるはず。
絶対おるって、確信してる。

そんなどうしようもない夏にも、世界で、日本で、街中で、事件や事故は起こる。
今この瞬間も誰かが車に轢かれて、通り魔に刺されて、死んでいってる。

『殺人鬼も誰かの隣人』
SNSがこれだけ発展して、ニュースなんていくらでも見られるのに
人は映えのスイーツとランチに夢中になりすぎて、いまだにこんな簡単な事実に気づくことができない
ニュースを見るたびに、『まさか自分が』
『こんな閑静な住宅街で』
殺人鬼が、『私は人を殺してます』ってみんなに言いふらすと思うのか?
人を殺す時に使う凶器を見せびらかしながら外を出歩くとでも思うのか
事件と事故の裏には必ず被害者や遺族がいて、それまでとそれからの人生も確実にある。
町ですれ違う人たちみんな、楽しく悲しく、人生を歩み続ける。

生きてる限り、快楽も恐怖もひっくるめて、背負い続けていかなければならない。
ホラー史上最も恐ろしいラストと断言できる。
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