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Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バックのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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海に行きたいだけなのに、次々と不測の事態に陥り、ノンストップで転がり続けるアンジェラとジェシー。ダイナーやスーパーしかないテキサス郊外、バカな兄貴とその仲間、突然の拘束、ドラッグやパーティの誘惑…不条理に抜け出せない「日常」はまるで「不思議の国のアリス」の世界だ。そこが面白かった。女子2人は朝目覚めて夢を見る。それは悪夢の始まりであり、ハイなトリップ。
嫌な同居人も嫌な仕事も家賃も水道代も現実。そこから抜け出せないのも現実。ガルベストンのビーチでドーナツ食べるのは永遠の夢。夢なら目覚めたくない、行かないなら夢は消えない。だから後戻りもしないし先へも進まない。なかなか洗濯できない汚い制服、我慢し続けるトイレ(つらい!)、下り逃すバス。2人は何度も眠って起きてまた眠りにつき、不思議の国も夢の中。もう現実には戻らない。
友情以上に強く結ばれたアンジェラとジェシーは、別々の房ですら繋いだ手を離さない(それ以外に繋がるものがないから)。嫌々だけどハードに働いて、サボるのにも身体を張り、ドラック売人の兄貴に「ちゃんと仕事しろ」と言うくらい、実は真っ当な労働者だからむしろ健気だ。海くらい行って何が悪い。まあ結果的に少々違法行為になるが…2人以外の方がよほどメチャクチャでクレイジーで理不尽なのだ。この不思議の国では。
終わりなき白昼夢の中、「がんばる」女子2人だけがなんとか洗濯して、排泄して吐き出す(文字通り“カタルシス”を得る)。つまり、我慢は身体に悪いってこと。その通り。
「寂れた部屋には寂しい場所の写真があるべき」「ウォルマートとか」「違う、Kマート」「洗濯でワクワクするなんて人生初めて」…そんなダイアローグが好き。いいコンビだった。
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