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EO イーオーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
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物語では通常、旅のお供であるロバを主役にした寓話ロードムービー。サーカス芸や使役労働は動物虐待だとの声を受けつつ、どうやらそれを訴える映画じゃない。じゃあこの映画はどうなんだ…といささか矛盾を孕むし、擬人化はしないけど例えば馬は感情(怒り)を表すタイプのキャラクター付けが見られる。そしてロバのEOを主人公として観る側は、その感情を読み取ることになる。可愛らしく穏やかで従順そうなロバでも、大人しく生贄にはされたくない意志を見せたりする。
つぶらな黒い瞳がカメラとなって映し出すのは、非情な世界。動物たちは人間との関わりを避けられない。どこへ行っても人の営みが干渉する。
EOがさすらう旅でのエピソードは、フットボールが戦争を象徴するようにどれも人間社会を暗示するもので、これはロバの目を通した黙示録なんだと思う。ラストはノアの方舟とも、絶望の果ての終末とも受け取れた。やっぱイエジー・スコリモフスキ、人類に対しては希望がなさそう。
神秘的な撮影、様々な光の使い方、滝壺のショットが美しい。レッドライトは少女とサーカス時代の記憶なのか、EOの内的世界だろうか。物言わぬロバの代わりにか、スコアは随分とドラマティックにエモーショナルだ(イタリア人登場でオペラとかベタでしょ)。いきなりのイザベル・ユペールに驚いたけど、さすが出てくるだけで威圧感たっぷりな「権力者」だった。
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