Yuya

運び屋のYuyaのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.8
御大イーストウッド
まさに 捨て身に近いほど 己を体現した渾身の作品だったんじゃ…

仕事と遊びに熱中する放浪人のその姿が
この上なく監督自身と重なってるようで
“アメリカの良心”とまで謳われたジェームス・スチュアートに似てる…なんて皮肉を幾度か挟み込んでくるあたりに 巨匠の自虐とも懺悔とも受け取れそうな哀愁を感じずにはいられない

突飛な事件ではあるものの 老人が淡々と繰り返すクライムロードムービーののどかさをベースに
マフィアとも飄々と付き合い ネットを憂いつつメールを学ぶような陽気で健気な一面
そして 失った家族との時間への悔恨の念に苛まれる真実
追う捜査官とのいたちごっこと呼応するように 繰り返し繰り返し反復する事で 観客を男の人生へと飲み込んでしまうような 圧倒的な共生感は まさにイーストウッドにしか綴れない唯一無二の黙示録と言えそう

多くの人を魅了し 大金を手にし 神さえ味方してそうな男が秘めた孤独と苦悩
イーストウッドもまた ジェームス・スチュアートがこの世を去った年齢をまもなく迎えそうだけど
きっと 彼はまだ…いやまたもや大輪を咲かせるに違いないって やはり次作にも期待してしまう
Yuya

Yuya