「しくじり先生 俺みたいになるな!」
先生:クリント・イーストウッド
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「家族の再生」あるいは「奔放に生き過ぎた男の贖罪」
これらをロードムービー形式で描いた物語は
『ペーパームーン』に始まり、
『パリ、テキサス』
『ストレイト・ストーリー』
『ネブラスカ』
など枚挙に遑がありません。
一方で家族や他人との関わりを軽んじて生きた男が
「自分の人生の虚しさに気づいた時にはもう遅い」
という作品も多く存在します。
『イワン・イリッチの死』
『市民ケーン』
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
『脳内ニューヨーク』
などがとりわけ印象的です。
今作『運び屋』の主人公アール爺さんもまた、家族のことを顧みず、好きな仕事だけをやり続け、自分勝手に生きてきた男。
老齢になってようやく家族の大切さに気づき、ずっと放ったらかしにしてきた家族に懺悔する姿に、クリント・イーストウッドの心情が仮託されています。
とりわけ主人公がラストで訥々と語る
「何より大事なのは時間なんだ」
「どんなに稼いだって、時間だけは買えなかった。」
という言葉に、家族との時間をないがしろにしてきたイーストウッド本人の後悔が凝縮されているように思います。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、ほろ苦〜い後味の逸品です。