南

運び屋の南のレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
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「しくじり先生 俺みたいになるな!」

先生:クリント・イーストウッド

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「家族の再生」あるいは「奔放に生き過ぎた男の贖罪」

これらをロードムービー形式で描いた物語は

『ペーパームーン』に始まり、
『パリ、テキサス』
『ストレイト・ストーリー』
『ネブラスカ』

など枚挙に遑がありません。

一方で家族や他人との関わりを軽んじて生きた男が

「自分の人生の虚しさに気づいた時にはもう遅い」

という作品も多く存在します。

『イワン・イリッチの死』
『市民ケーン』
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
『脳内ニューヨーク』

などがとりわけ印象的です。

今作『運び屋』の主人公アール爺さんもまた、家族のことを顧みず、好きな仕事だけをやり続け、自分勝手に生きてきた男。

老齢になってようやく家族の大切さに気づき、ずっと放ったらかしにしてきた家族に懺悔する姿に、クリント・イーストウッドの心情が仮託されています。

とりわけ主人公がラストで訥々と語る

「何より大事なのは時間なんだ」
「どんなに稼いだって、時間だけは買えなかった。」

という言葉に、家族との時間をないがしろにしてきたイーストウッド本人の後悔が凝縮されているように思います。

ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、ほろ苦〜い後味の逸品です。
南