いきうめ

アートのお値段のいきうめのレビュー・感想・評価

アートのお値段(2018年製作の映画)
4.7
2019年5月、存命作家としてオークション史上最高額となる約100億円を記録したジェフ・クーンズの《ラビット》(1986)。スチール製のバルーンアートに見えるこのうさぎが、なぜ莫大な金額で競り落とされるのか。アーティスト、コレクター、ギャラリスト、オークショニア、批評家らアートワールドのプレーヤーたちのインタビューから、巨万の富を生み出す現代アートのカラクリに迫る刺激的なドキュメンタリー。

登場人物がとにかく豪華で一言ひとことに目が離せない。《ラビット》の記録樹立以前ではあるが、金銭づくアーティストの代表格であるクーンズをはじめ、彼と対蹠的に、寡黙に「描く」ことを墨守するラリー・プーンズ。コレクション手法を惜しげもなく披露し、ユダヤ系でありながらマウリッツィオ・カテラン《彼》(2001)を収蔵する老獪なコレクター、ステファン・エドリス。サザビーズのオークショニアとして作品の獲得と売り込みに情熱を注ぐエイミー・カペラッツォ。アートワールドを手厳しく批判しながら、自らもその住人であることをシニカルに語る批評家ジェリー・サルツ。現代アートに敵意を抱き、オールドマスターへの郷愁を語る美術史家アレックス・ネメロフらの語りが現代アートの姿を形づくっていく。

だからと言って、これで正体見たりということには決してならない。むしろ現代アートを取り巻く異常な熱狂、雰囲気、つまり現代のアウラ、交換価値が纏うアウラが大金を呼び込むのかもしれない。現代アートの多面性をあぶり出す秀作。