なを

アートのお値段のなをのレビュー・感想・評価

アートのお値段(2018年製作の映画)
5.0
おもしろかった!
これまで現代アート=コンセプチュアル・アートだと思っていたけど、これは誤りだった。現代アートとはシンプルに「現代を反映するアート」であり、それはほんのひと握りの超富裕層によって支配される資本主義社会と密接に関係している。
従来のアーティストと画商の関係において生み出されていた利益の何百倍もの金がオークションで動く時代になって、アートは投資家が扱うジャンルに変貌した。
「多くの人が『値段』を知っていても『価値』を知らないんだ」という言葉がとても印象的。たしかに作品の評価はいまや「落札価格」でもって表現されるようになってしまった。
こうした情勢を上手く利用するジェフ・クーンズのようなアーティストもいれば、強く反発するラリー・プーンズやゲルハルト・リヒターのようなアーティストもいる。我関せずと言った様子でひたすら制作に没頭するジョージ・コンドや、状況を冷静に見つめるクロスビーやマリリン・ミンターのような新しい時代のアーティストたちもいる。
市場が異様に加熱し、傑作が個人に買い取られ世の中から姿を消していっている状況に対して、あるキュレーターは「我々は破滅に向かっている。審判の時は近い」とコメントした。
これからアートはきっとまた新しい局面にぶち当たるに違いない。けれどもアーティストたちが情熱を持って制作を続けているという事実だけはこれからもずっと変わらないだろう。現代アートがこれほどまでに価値を得るようになった背景には、作品そのものの純粋な尊さも絶対にあると思う。(ウォーホルも、プリンスも、村上隆も、みんな制作中の眼は鋭かった!)
そしてその尊さの基準は、鑑賞者各々によって違っててもいいんじゃないかなと思った。
迷うことなく、自分なりの審美眼を磨いていきたい。
なを

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