よどるふ

映画ドラえもん のび太の月面探査記のよどるふのレビュー・感想・評価

3.7
ドラえもんの道具によって生まれた“現実に重ね合わせられた異世界”でのSF冒険譚。思っていたより異説クラブメンバーズバッジのルールに根ざした展開を入れてくるのだけれど、大長編となるとやや納得しづらい点はあった。

この異説クラブメンバーズバッジをメインに置いた展開を映画ドラえもんでやる必然性は充分以上にある。しかしその必然性を盛り込もうとしすぎた結果、展開的に苦しいロジックがあるのは間違いない。それでもひとつの道具から話を組み立てようとする意欲は評価したい。

終盤の大ネタとして、「逆転の一手」と「ルカたちの決断」のふたつがあり、そのどちらにも唐突感が出ないように布石を仕込む手際はお見事。そのどちらにも異説クラブメンバーズバッジがきちんと関係しているという徹底度。ここは本当に素晴らしいと思う。

とくに「ルカたちの決断」。22世紀の科学技術と、かつて夜空を見上げて月に思いを馳せたロマンチストたちと、伝承を信じないリアリストたちの思いの重なりが生んだ小さな穴に入り込むような着地で、直前の勧善懲悪パートで祝祭感を出しすぎないようにしていたのも道理。

その他にはゴダートの中間管理職描写が印象的だったり、しずかちゃんの芝居やカット、あらゆる場面での表情やストーリー的に果たす役割的がよくて目が離せなかったり、「この設定で“恐怖”を演出するなら」の最適解を提示された思いをしたりしたのが個人的なハイライト。

いろいろな過去作を連想する作品だったけど、個人的には生涯初鑑賞ドラえもん映画が『のび太の創世日記』だったことを思い出しながら観ていた。
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