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ふたつのカタルーニャのayakoのレビュー・感想・評価

ふたつのカタルーニャ(2018年製作の映画)
4.0
知ってるつもりだったけど如何に無知かを思い知らされた。
初めてバルセロナに来た時にたまたま大規模なデモをやってるところにホテルがあったから、帰ろうとしたらデモのど真ん中で身動きを取れなくなってしまい、初めての土地で一人旅ですごく怖かったのが2年前。でも怖かったと同時に、こんなにも自分たちの「カタルーニャ人」としての民族アイデンティティを強く持ってること、「スペイン人」だと思ってないことを目の当たりにしてすごくびっくりした。

私も日本人であることに誇りを持ってるけれど、じゃあカタルーニャへの郷土愛と同じようにここまで神奈川に対して郷土愛があるかと言われると自信がないし、この人たちみたいにそこまで政治的な発言をすることに活発でもない。し日本人の多くがそこまで政治的な発言をしたがらないと思う。だからこそすごくカタルーニャという地域について、なぜここまで独立したいのかを知りたいと思ったし、バルセロナに来たかった、バルセロナで勉強したかった理由。

実際ここに来てから何回か独立関連のデモを見たし、ストライキで大学のドアや道路が独立派の学生によって大胆に封鎖されるのも当たり前。おじいちゃんおばあちゃんから学生まで黄色いリボンを付けてる光景を街中で見かけるし、学校の中ではありとあらゆる目につく場所に独立を訴える落書きやバナーが溢れてる。寮でも独立の旗がいくつもの部屋から垂れ下がってる。みんなカタルーニャ語を話すし、むしろスペイン語が怪しい人なんかもいる。

最初来る前は、いや、だって独立なんて出来ないでしょって思ってたけど、ここに住み始めてから所謂海外から見た「スペイン」との文化の差や「人」の差を感じる。サラマンカに1ヶ月いた時は、田舎町だけど首都に近くて、たぶんいわゆるスペイン人の感覚に近い人が多かったんだと思う。「カタルーニャ人はおとなしい」ってよく言うらしいけど、たしかに特にアンダルシアとかほかの地域に行ってみてからここに帰って来ると、たしかにおとなしい感じがする気がする。と同時に警戒心が強いというか、少し排他的に感じもする。

映画に関係ないこと書きまくってるけど、改めてこの映画を観て、如何に急速に尋常じゃないことが起こっているかが分かった。2年前に行った時はReferèndumの前。きっと去年留学出来ていたら、ここにいられたらもっとその様子を見れたんだろうなと少し惜しかったなあと思う。映し出された映像は今までニュースで見た以上のかなり激しくて暴力的な光景。生々しく、痛々しく、今自分がいる穏やかなバルセロナでこんなことが起こっていたとは信じがたい映像で溢れていた。ただ投票しに来た一般市民を老若男女問わず無差別に殴り、引っ張り、蹴飛ばす警官たちの姿はあまりにも衝撃的だった。

インタビューされてる独立支持派のリーダーたちの中ではかなりの数が捕らえられて懲役30年がゴロゴロ。政府がこんな対応をしなければここまでカタルーニャが分断されることはなかったっていう言葉がとてもしっくりきた。街中を歩くと隣り合ってはためくスペイン国家とカタルーニャ州旗をよく目にする。それだけ両方の考えの人がいるということだし、きっとまだまだこの問題は続くんだろうなとこれを観て思った。

この映像を作ったネットフリックス天才。最後自分のカガネル人形をもらって大喜びするプッジダモンが可愛すぎてファンになりかけた。あと最近カタルーニャ語リスニングだけはちょっとできるようになった気がしている。オケの練習で小節数必死に聞き取るから数字だけは完璧。あとこれを観て知ってる景色が沢山出てきて、あとちょっとでこの景色は見れなくなるのかと思ったらちょっとだけ帰るのが悲しくなった。
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