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薬の神じゃない!のmatchypotterのレビュー・感想・評価

薬の神じゃない!(2018年製作の映画)
4.2
何人かのフォローしている方々が観ていて、評点も高いので気になってたやつ。

昨年は韓国映画とインド映画の世界に足を踏み入れた。今年もそれは続けたいと思うが、その韓国とインドの間にあるこの大きな中国大陸や香港の映画にもチャレンジしていきたい。

その記念すべき今年の中国映画1作目。
中国拳法や武侠の映画も好きだけど、完全な現代劇。

薬、正規薬の値段が高くて本当に必要な人々の末端まで行き届かないという日本でも、世界のどこにでも潜在する社会的なテーマ。
しかも、これ、実話ベースなのか。やっぱり中国、ダイナミズム、ハンパなかった。

日本で言う“ジェネリック”みたいな話ではあるが、“ジェネリック”は国に認可された上で、新薬と成分や効き目が同じ後発医薬品で安価なわけだが、この映画に出てくる薬は、認可されてない他国で売られてる薬。

つまり、密輸。
自分の国に売られている薬では高過ぎて購入し続けられない。
しかし、インドで同じ効き目の薬があり、中国で1瓶がそれなら7瓶買える、と。

しかし、密輸、見つかれば違法。
誰がそんな危ない橋を渡って、遠い国にまで行って持ち帰り、さらにそれを密かに売り捌けるのか、と。

それをやってのけようとする下層市民の貧しさの中から生まれるダイナミックでささやかな反骨魂の映画。

こう言う映画、良い。
当局側からすれば犯罪であって、効き目があろうと認めてないのだから“ニセ薬”でしかない。
しかし、認めてなかろうが効き目は確かで安価に購入できて事実上は人々の救いとなる“救い”。

一方で、人々の救いになるという大義名分で無謀なその計画で薬を手に入れ躍進するも、一攫千金狙って儲けて自分の不都合や生活を金で解決したい下心や困窮が背景にある。

人の救いではありながら、高い新薬と同じく病人から金を巻き上げることには変わりなく、犯罪してまで利益に興じて自分の生活を豊かにすることは果たして善き行いなのか、というジレンマも忍ばせる。

そんな色んな国の背景、社会的背景、文化宗教的背景、個人の背景が「同じ効き目で安価な薬を密売して人々を救うために売りさばく」に込められてる作品。

最初は薬局、ではなく、胡散臭い強壮剤売りの主人公の男が、白血病にかかる男からその話を持ちかけられて、背に腹は変えられない状況を鑑みて半ばヤケクソで始めるが、それがあれやこれやと仲間が増え、役割が増える。

仲間が増え、役割が増えれば、その分ドラマが生まれる。

この仲間の増え方もリズミカルで、コミカルで、面白い。
そこから一旦の成功を見せたかに思われたが、やっぱりバレたりモメたりしないと映画としては、、、と思ってると、そこは期待通り。
だが、後半のドラマとの対比が良い。押して、押して、、、一気に引く、みたいな。

しかもそれが別に最後のオチ、というわけでもなく、そこからさらに二転三転してくる。

表の目を盗んで薬を密輸して仲間で結託して儲ける裏のカラクリでワハハ、、、あれ?というプロットの面白さから、最終的には人の尊厳とか、命の尊さ、仲間との友情だったり、お金よりも大切なモノ、的な。

薬だ、金だ、騙くらかすだ、取り締まるだ、の観た通りのエンターテインメントに寄り添う形でリアルな人々の営みや現実、人情も描く。
まさしく、社会派エンターテインメント。

韓国で言う『エクストリームジョブ』『ベテラン』『スウィンダラーズ』みたいな雰囲気に近く、日本で言う池井戸系の綿密、且つ、矢継ぎ早な急展開駆け引き、からの、腹決めて出たとこ勝負、立場逆転もある。

最後はちょっと予期してなくて込み上げてきた。
今年の中国映画1作目、なかなか良き作品に出会えた。


F:1955
M:3629
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