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薬の神じゃない!のShinMakitaのレビュー・感想・評価

薬の神じゃない!(2018年製作の映画)
2.5
上海。インド製の怪しげな強壮剤を売る中年男チョンは、店の家賃も老父の医療費も払えないほど困窮していた。ある日、慢性骨髄性白血病を患う青年リュが店に現れ、インドで売っている抗がん剤を買ってきてくれないかと頼んでくる。その薬とは、スイスの製薬会社が開発発売した「グリニック」。インドではそのジェネリックが製造されており、中国で処方される正規品より遥かに安価なのだ。貧しい患者たちの中ではこの正規品を買うことができず亡くなる者も少なくない。しかしインド製は中国国内で認可されておらず、これを輸入・販売したら薬事法違反で長期刑になる。それは知りつつも、ギャラ欲しさにチョンはインドに渡る。現地の製薬工場長と渡り合い、なんとか密輸を成功させたチョンは、白血病患者を多数信徒に抱えるリウ牧師、患者ネットワークを持つダンサーのスーフェイらと手を結び、秘密裏にインド製グリニックを販売していくのだが…


「薬の神じゃない!」

以下、ネタバレの神じゃない!


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劇中登場する薬のモデルは「グリベック」。教科書的にはイマチニブという名で知られる悪性腫瘍薬です。製造する〈スイスの企業〉はノバルティスファーマですね。正規薬とジェネリック薬の違いについて色々誤解も意見もあるでしょうが、この映画に於いては、正規薬もジェネリックも「同じ物」と考えて良いです。正規薬の特許が切れたらジェネリックを製造販売してもいいけど、特許があるうちは正規薬しか手に入らないという状況になります。グリベックは発売と同時に各国で特許を取得しましたが、なぜかインドだけは取得できませんでした。そこで、インド国内でジェネリックが誕生したわけです。

さて本作。シリアスな社会派ドラマになりうる題材なのに、思い切りエンタメに振り切った演出で楽しませてくれました。仲間集めのクダリは「七人の侍」や「アベンジャーズ」のノリ。偽薬販売詐欺師との乱闘やカーチェイスなどはアクションと笑いですよね。韓国映画「チェイサー」のように自己中クズ男が正義に目覚め、なんだかんだで「シンドラーのリスト」みたいな泣ける展開になっているという娯楽映画なのでした。早いテンポとすぐ暴力振るう熱量に引いてしまうところもあるけどね。反体制的になりうる題材だけど、結局政府はしっかり薬価をコントロールして、死亡率がいまや劇的に下がりましたよと結論付けたのはやはり中国映画らしいかな。あ、あとスーフェイ役の女優さんが森尾由美に似てるのもポイント。軽くオススメ。
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