Jonayama

クワイエット・プレイス 破られた沈黙のJonayamaのレビュー・感想・評価

3.9
視力は無いが非常に優れた聴覚、恐ろしいまでの運動能力と獰猛さを持った宇宙から飛来した未知の怪物が襲い来るポストアポカリプス系パニックホラー映画『クワイエット・プレイス』の続編。

前作の直後、食糧が尽きたのか家を出て夫の友人だったエメットが住む谷へと向かう生き延びたアボット一家が過酷な世界で再び危険にさらされる。
エメットの住む地下に隠れ、音を立てずに息を潜めるも食糧の備蓄が少なく行き詰まりを感じる中、娘のリーガンは前作で気がついたハウリングによる音波攻撃が怪物たちに有効だったことを利用し最近発見した放送局からそれを流そうと計画を立てる。
しかしそれは怪物たちの徘徊する世界へと繰り出すとても危険な旅路だった。


売り文句である"音を立てれば即死"という設定が恐怖と緊迫感を殊更に掻き立て、前作同様感情移入してこっちまで息を殺して見入ってしまう一本だ。
大作パニック映画の貫禄を感じる画づくりや一触即発な静寂の描写がとても見事で最高のスリルが味わえるのだが、反面その設定が多くのツッコミどころの原因にもなっているのでそこを許容…というか目をつぶれるかどうかで本作の評価は大きく変わるだろう。

個人的に映画内のツッコミどころにはわりと寛容な方だと思っているがこのシリーズは特に多い+シリアスな作風のためそれが際立ってしまいどうしても看過できなくなってしまうのが歯がゆい。
数が多いのかあまりにも耳がいいのか(嗅覚はおそらく無い?)音を立てると湧くように即座に現れる化け物、あまりにも泣かなすぎる新生児あたりは正直違和感が拭えない。化け物も非常に危険な存在ではあるものの軍が壊滅するほどではないように思える…
また今回大活躍する娘のリーガンはとてもヒロイックでカッコいいのだがやはり聾唖ではあの世界をあんな風には生き延びられないよなぁと現実的なツッコミが浮かんでしまう。。

前作が子を守る夫婦に比較的フォーカスしていた作風なのに対し今回は姉弟が活躍する路線となり中盤以降は母エヴリン役のエミリー・ブラントが少し引いたポジションに収まってしまったのも個人的にはやや不満だった。子役たちは決して悪い演技ではないのだが役柄的にあまり好感が持てなかったのでエヴリンを主軸に展開して欲しかったと個人的には思う。
亡くなった夫リーの代わりを埋めるように今回メインキャストを務めるキリアン・マーフィーはとても良かった。ひげもじゃでややがっしりした印象でキャリアの中でもかなり珍しい姿が見られた。彼はポストアポカリプスモノとしてリアルな小汚さをしていて良し(笑)
そういえばややネタバレだが後半現れる充実した物資で文明的な生活をしているコミュニティの存在は『ウォーキング・デッド』などのポストアポカリプス系お約束なのでもうツッコんだら野暮というものか(笑)


冒頭10数分を使って丁寧に描いた"Day 1"のシークエンスはなかなか良い雰囲気だった。
と思ったらラストはもう少し余韻を描いてもよかったのではと思うくらいプツッとやや食い気味に終わる。続編が予定されている余裕からなのだろうか。。


なんだかけなすようなレビューになってしまったがガバガバな設定に目をつぶり瞬間の緊張感や恐怖描写に注目すればとても高水準なスリルを味わえる作品なので、ホラー映画好き、前作を楽しめた方はぜひ一度観てみるべき作品だろう。
エンドロールが8分半あり本編は90分を切るコンパクトな尺なのでとても観やすい。


余談だが本作はやたら難癖をつけて厳しい評価を下す印象の映画評論家やRotten Tomatoなどで高く評価されているらしく、楽しんだ映画が評論家たちにこき下ろされるのを何度も目の当たりにした身としてはやはり彼らのいうことはようわからんと思ってしまう。
もちろん、前述したように自分も本作を楽しんだのは間違いないのだが。。
Jonayama

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