原作が好きで、音楽が実際に耳で聴けるということと、あの世界をどう映画で表現するのか楽しみにしていたが、期待の上を超えてきた。
とにかく構図が美しく、引きのカットの直線や図形が印象的な画面と、人物に寄って動きを追ったりするカメラワークの緩急が視覚的に心地良く、映像だからこそできる表現になっていて映画でこの作品をやるということにおいて成功していると感じた。特に栄伝亜夜のカデンツァに入るシーンの演出は映画的な魅せ方で素晴らしかった。
建物があまりにも素晴らしく、ロケ地が気になって調べたところ、武蔵野音楽大学附属高等学校入間キャンパスのバッハザールという所だそうで、この建物本当に美しいなと思うと同時に、この美しさをこれだけ使いこなして魅せられる撮影に脱帽した。撮影監督ピオトル・ニエミイスキ氏の他の作品も観てみたいと思った。
あとモーツァルトのレクイエムの使い方が良かった。あのシーンの映像も美しかったし、ホフマンだけでなく、亜夜の方にも「レクイエム」が効いていてなるほど、と思った。
全体的に亜夜にフォーカスしているので原作の細かい部分は削ぎ落とされているが、上手く纏まっているので、原作読了済の視点からでも映画版としては大満足だった。
斉藤由貴さんの三枝子が個人的に好きだった。