atagi

蜜蜂と遠雷のatagiのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
4.2
音楽映画の枠組みでありつつ、とても良くできた脚本の映画だった。
コンテストの経過とともに進むシンプルな構図だけれども、その中で天才たちのせめぎ合いと、関係の変化がとても綺麗に描かれている。

正直、この手の音楽は「凄い」ことまではわかるけど、どういったテクニックが凄いとか、誰が上手いか、というところは演奏を聴いているだけではイマイチわからない。
それでもこの作品に登場する人物たちと同じようなリアクションを感じられるような作りになっているのが凄い。
これは本当に、それぞれのキャスト演技力のレベルの高さと、天才たちのキャラクターごとに合わせたカメラワークなど細やかな演出の変化の結集に尽きると思う。

終盤にかけての盛り上がりは、「セッション」の時のような高揚感を意識せざるを得なかった。
ある種狂気的なラストであった「セッション」のラストも良かったが、今作の松岡茉優の全てから解放されて清々しく笑うラストカットも、とても印象的で文学的な美しさも感じる素敵なエンディングであった。
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