このレビューはネタバレを含みます
原作は未読。
ピア二ストの世界を描いた話が好きだったので期待値は高め。
期待を裏切ることなく良かった。
映画でありながら、まるでコンサートホールにいるのかと思った。それほど圧倒され、思わず拍手をしそうになった。
音に一切妥協をしていないとあったが、素人目で見てもそれがよく伝わってきた。
4人が4人とも自分の中の“何か”をかけてピアノを弾いている。その点では、やはり明石が印象的だった。
春と修羅のカデンツァ部分での一人一人の楽譜から、その人の音楽性が現れているシーンが良かった。
亜矢の言った、「世界が祝福している」は
土砂降りの雨のことだと解釈した。
普通の人には厄介な雨をそう捉えるのはやはり天才の考えなのだろうと感じた。
ジンのカデンツァ部分は蜜蜂の羽の音のようで、亜矢のカデンツァは遠くで鳴っている雷にも聞こえた。
鹿賀丈史演じる指揮者は本物であるからこそ、コンテスタントにとっては厳しいが、
本物をふるいにかけられる存在なのだろう。
個人的には新人の鈴鹿くんがかわいかった!
そのかわいさが、怪物を際立たせているように感じた。
ジンくんだけは、コンテストで緊張している素ぶりがなく、子供のようにただ純粋にピアノを弾くことを楽しんでいた。
その世界に染まってしまった“大人”にとって、何にも染まっていない“子供”は怪物なのだろうと思った。