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蜜蜂と遠雷のBeausumのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
4.8
観た日の帰り道、環境音や人の声をなんだか耳に入れたくなくて、でも違う音楽を聴くのも違うかんじがして、
結果Spotifyで波の音を聴きながら帰りました。普段そういう自然の音みたいなの全く聴かないのだけど、とても良い選択だった。作中の海辺ともリンクする。

体感30分くらいだった。
映画が終わって席を立ちたくないなと思ったのはいつぶりだろうな・・・
半ば放心していたとも思う。

私は恩田陸作品が好きなひとで、原作も読了しています。
もうね、あの4人のキャストを人選し、そして演じてくれたことに大拍手です。
演者たちの会話の間がとても良いなと思った。
とくに私は風間塵と英伝亜夜。原作イメージにぴたとハマる。

2人の月夜のもとの連弾シーンが、いろいろ参りました。良い意味で。
英伝亜夜のどこか危うくて消えてしまいそうなかんじ、なにかが欠けているかんじが伝わる。
誰かに気づいて欲しくて、誰かにわかって欲しいんだよね。
あの2人の見つめ合いが、恋に落ちてもまあおかしくないシーンであるのに、恋とはちがうソウルメイトみたいな音色だった。お互いの才能が心で通じ合っているみたいな。

それとね、
私の心が一切合切持っていかれた極め付けは、終盤のお母さんとの回想シーン。
お母さんのいつでも音楽はあるよって言うような台詞。そんな言葉が原作にあったかは覚えてない。
けれども、
この言葉で、いろんな記憶が呼び起こされた。そうじゃんね、って気づいた途端に涙がはらはら、ぽろぽろ。
私が映画で心動かされるのは、自分の記憶と何か感情が交わるときだよなあとつくづく思う。

クライマックスの英伝亜夜の本選曲、ピアノ協奏曲第3番。原作は2番なのだが、映画ではよくよく話し合って3番に変えたらしい(公式Twitterで松岡茉優がお話ししておりました)
この演奏を聴いてる途中で、
「あ、心が満たされてる」と実感した。それだけの作品の熱を私は感じたのであろうと思うと嬉しくなる。

演奏者って奏でる音に一途なの、そして自分自身と向き合うことに逃げないひと。だと私は思っている。だから魅力的なのです。
感覚的に本当にサイコウな時間だった。
素晴らしい映像に仕上げてくれてありがとうだああ
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