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蜜蜂と遠雷のriverのネタバレレビュー・内容・結末

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作は読んでないけど、たまたまNHK BSでやってた浜松国際ピアノコンクールのドキュメンタリーを見て興味を持ったので鑑賞。

コロナ騒ぎのせいでひょっとしてガラガラかな?と思いきや、意外なことに映画館はほぼ満席。人気作品なのですね。

原作を読んでないのでよくわからなかった黒い馬、”プロコの3番”にある弾むようなリズムが馬の足音のようで、それをイメージした絵ということなのかな?雨音も、蜜蜂の羽音も遠雷も風の音も、世に溢れる音全てが音楽に聴こえてしまうピアノの天才児たちの世界。

松岡茉優演じる亜夜が主役のようだけど、全面的に依存していた母を13歳で亡くし、そのショックでコンクールで演奏できなくなった彼女のトラウマからの復活劇、というにはちょっとキャラクターが弱いのかなと感じた。福島リラや鈴鹿央士が演じたようなエキセントリックさもなく、妻子持ちサラリーマン演奏家の松坂桃李のような対極的な立場にいるでもなく。
小説ではきっと成り立つのだろうけど、絵だけで「母との強すぎる絆が断ち切られたことで演奏できなくなる天才少女」を説明しきるのは難しいのかもと感じた。

森崎ウィン演じるコンクールの優勝者・マサル、彼が一番衝撃的だった。この人こんなに輝ける人だったのか!と(失礼な言い方でごめんなさい)。
NHKの旅番組「2度目の◯◯」シリーズでしか見かけてなかったので、ピアノの貴公子然とした佇まい、師匠や巨匠にちょっと反抗して上手くいかず、でも本番でそれを引っくり返すというコンクールを制する天才役にピッタリだった。演奏場面も迫力満点、鹿賀丈史のタクトと競ってプロコの2番を喝采に導くところはダイナミックでとてもよかった。 
ドキュメンタリーで見た演奏家たちにとても近いように見えた。多分みんな、ピリピリしながらもあんな風に他者にはそれなりに優しく、でも内面に葛藤を抱えながら演奏しているのだろう。

斉藤由貴が英語で喋る役(同じ審査員の元妻?)なのがこそばゆかったり、海辺に工房を構えるピアノ調律師の眞島秀和、コンサートホールクロークの片桐はいりといったチョイ役にも、お気に入りの役者さんたちがいてニヤリ。そうそう、工房を訪れる亜夜が夜の海辺を歩くシーン、恐ろしく美しい月だったな。あれ、ピアノでどう音にするのだろうとか考えてしまった。

課題曲の「春の修羅」、それぞれの演奏でのカデンツァを聴きたいけど、あれサントラに入ってるのかな?であればちょっとほしいかも。
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