KazueHagiya

ちいさな独裁者のKazueHagiyaのレビュー・感想・評価

ちいさな独裁者(2017年製作の映画)
4.0
ネットニュースで映画の紹介と監督のインタビュー記事を読んで、観てみたくなったので観ました!今までヒトラーとか第二次世界大戦を題材にした映画は割りと観てきたのですが、ヒトラーからの指令を受けた大尉になりすました脱走兵がいたことは知りませんでした。
映画自体は同じようなシーンが続く故に中盤に退屈しちゃいましたが、主演の俳優さんの演技は素晴らしかったですね!!最初は生き延びる為のその場しのぎだったのがいつの間にか大尉になり、でも素顔は大尉の器を持ち合わせていないあどけなさが残る青年で・・・
というのを見事に表現していました。実在のヘロルトはこんな人だったんだな…と目に浮かぶぐらいで、常に大尉ではないことがバレるかバレないかの綱渡りをしている緊張感が伝わってきました。演技がうまいしイケメンだし、素晴らしい俳優さんでした(*^ω^*)
映画を観る限り、ヘロルトが受けたというヒトラーからの指令はウソだとわかるぐらい雑で、たぶん周りの人間も彼が本当はヒトラーお墨付きの大尉ではないことに気づいていたと思います。フライタークは気づいていたでしょうね…。でも生きる為には見過ごさなければいけなかった。戦争って全ての人を極限の心理状態に追い込む凄まじいものなんだと感じました。
看守と囚人に関するジンバルドーって心理学者の実験がありますが、ヘロルトを見てたらジンバルドーが看守役をもって実証した懲罰心理や権力を振りかざす心理がひしひしと伝わってきました。
ヘロルトは戦犯としてドイツの敵国だったイギリスで裁かれましたが終戦は迎えています。でもなんで彼の悪事がバレたかというと、食パン一斤盗んで、進駐してたイギリス軍に逮捕されたからなんです。食パンですよ!映画のキャッチコピーのように、彼が振りかざしていたのは食パンで崩れるほどに脆い借り物の権力だったんです。
戦争は名もなき青年をちいさな独裁者に変えてしまうんですね。邦題が1番映画の核心を突いてるように感じられます。

映画とは関係ない話になりますが、彼やヒトラーが第二次世界大戦でやったことはスポーツの場面でも今も尾を引いているように思います。特にサッカーやバレーボール、スキージャンプといったドイツとポーランドの実力が拮抗してる競技だとそれが顕著に感じられます。ドイツがポーランドに、ポーランドがドイツに負けた時のドイツ、ポーランドの怒り方が尋常じゃないですからね…。特にこういう映画を観たあとだとスポーツ観戦してても戦争の爪痕が感じられて、なんとも言えない気持ちになります。
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