このレビューはネタバレを含みます
雰囲気的にアガサ・クリスティ的かなと思い敬遠していたが思い切って鑑賞。
130分と長めのわりにテンポが良かったせいか退屈さはあまりない。が登場人物への事情聴取はキャラクター紹介も含めてでどうしてもボリュームが出てしまう。
007のダニエル・クレイグがコロンボか古畑かというようななんとも掴み所のない探偵ブノワ・ブランを演じる。
大富豪のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が自殺したところから物語は始まり、スロンビーの子供や孫に加えお抱え看護師のマルタ(アナ・デ・アルマス)らが一堂に会し警察の取調べを受ける。
そして犯人は不明のままハーランの遺言状の内容が明らかに…
物語は看護師マルタの視点で進んでいく。
個人的にはアナ・デ・アルマスはナイト・ウォッチャーやノック・ノックの小ずるい・厄介女のイメージが強くあまり好きではない。
だが「エクスポーズ/暗闇の迷宮」で見せたような素朴で真面目なタイプを演じたらそれはそれではまる。
おそらくあのベビーフェイスがその存在感に一役買っているのではとも思う。
この看護師のマルタが嘘をつくと吐いてしまうゆえに嘘がつけないという設定なのだが、やや無理がある。しかしこれは物語の鍵になる設定でもある。
ダニエル・クレイグは007のボンド役に抜擢されたカジノ・ロワイヤルで、それまでのボンド像とは少し違う、甘さを抑えた渋さでかつ強さと哀愁が同居するような、あの鋭い眼光にそんな姿を見た。しかし本作ではキャラクターはガラッと変わって飄々としたややもすると軽妙洒脱な、そんな探偵ブランを演じている。これが回を重ねる毎に馴染んでくるのだろうか。
他のキャストも豪華で個人的には大富豪役のプラマーはやっぱり適役。そして娘にジェイミー・リー・カーティス、その夫にドン・ジョンソンと一時代を支えてきた名優達が脇を固めている。
クリス・エヴァンスという役者はあまり覚えがなかったが、後半は彼がストーリーの中心になる。
真相はやや無理があったようにも思うが、総じて物語の世界観、刃の館に引きずり込んでくれるような作品でなかなか良かった。