コロン

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のコロンのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

アガサ・クリスティの「ねじれた家」を彷彿とさせる「大邸宅、大富豪の謎の死、その相続人達、名探偵」を揃え、テンポ良い緊迫感とユーモアを絶妙にバランスさせたライアン・ジョンソンのオリジナルの脚本は秀逸で、稀にみる極上のミステリー だと思う。大富豪のハーランを演じたクリストファー・プラマーの存在感と貫禄は抜群だし、胡散臭い崖っぷちの相続人達をシリアスかつ楽しげに演じたジェイミー・リー・カーティス達芸達者は流石だし、南部なまりの軽妙な名探偵ブノワ・ブランのダニエル・クレイグも印象深い。しかしなんと言っても、恐怖に戸惑いながらも、誠実さと勇気を最後まで失わなかった看護師マルタ・カブレラ役のアナ・デ・アルマスが素晴らしい。自分を殺人犯と名指しした瀕死の家政婦(彼女の勘違いだけど)を必死で蘇生させようとしたマルタの良心と潔さには感服する。悪知恵だけは働くクリス・エヴァンスの告白を巧みに引き出した機転も見事。不法移民の娘で赤の他人に過ぎないマルタを唯一の相続人に指定し、重過失を犯してしまった(本当は違うのに)マルタを、自らの命を捨ててまで守り抜こうと瞬時に決断したハーランの覚悟には大いなる敬意を表したい。マルタの誠実で真直ぐな心根をちゃんと見抜いていた家長ハーランの慧眼は流石というべきか。ハーランのマグカップを持ったマルタが、茫然自失の体の相続人たちをバルコニーから見下ろすラストは、痛快で小気味良い。007最新作「NO TIME TO DIE」でのアナのクール・ビューティ振りが楽しみ。ナイフのギミックがあったから良かったようなものの、邪悪なクリスの暴挙を、警官と名探偵が目の前で許しては駄目でしょう。階級社会の格差とか移民問題とかネオナチとか、現代アメリカの抱える一筋縄ではいかない闇の、ストーリーへの織り交ぜ方も絶妙。
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