よつゆ

元禄忠臣蔵 後篇のよつゆのレビュー・感想・評価

元禄忠臣蔵 後篇(1942年製作の映画)
3.8
溝口の描く忠臣蔵の後篇。

吉良邸討ち入りは、物語中盤あたりで手紙の口頭の説明によって一瞬で片付けられ、その後ひたすら討ち入り後の浪士たちの様子が描かれる。
前篇では時代考証に忠実に描き淡々とした調子であったが、後篇はドラマチックな展開がある。

やはり女を描きたかったのか、討ち入り後から男装した若い女が現れる。
ただ、このドラマはやはり取ってつけたようなものになってしまっている。
メインはどうしても赤穂浪士で、このドラマは映画における一要素に過ぎず、ラストシーンの盛り上がりを助長する働きはしている。
そのため、ラストは圧巻。

赤穂浪士と女の死。
そのショットは本当に素晴らしい。
やはり、前篇も含め『元禄忠臣蔵』の見るべき点はその映像美だ。
前篇では静的な美しさがあり、後篇では倒れて着物が乱れた女のショットなど、静かながらも内在する激しさが露わになったショットがあり、直接は見せないものの、切腹のシーンは圧巻。

溝口作品における映像美の真骨頂を見たかもしれない。
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