Chico

象は静かに座っているのChicoのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
5.0
特に好きなのはピンボケの多様と絶妙にフレームアウトする被写体。感情がこっちに向かってきたり遠ざかったりする感覚。シーン一つ一つを切り取って写真集にできそうなほど印象的な画と、灰色の曇天に刺さるように響く劇伴。

人間関係も風景も全てが殺伐とした中、それぞれ絶望と孤独に生きる登場人物4人の人生が、因果によって交錯する。遠く離れた街にいる座っている象の噂を聞いた彼ら。果たして象を目にすることができるのか。

タル・ベーラに師事した若き新人監督フー・ボーの長編デビュー作、にして遺作。

痛々しくて鬱々とした234分ですので誰にでも勧められませんが、人生の意味、自分の存在意義などについて真剣に考えたい時に鑑賞すると響くものがあると思います。

本作の環境や出来事など状況は特別悲惨で悲運かもしれない。だけど本質的には現代の人間関係の中で湧き上がる普遍的な感情が描かれていてると思う。静かな空気の中、身体に電気が走るような瞬間が何度もあって、それはまるで登場人物の身体を借りて放たれる監督の魂の叫びのようでした。

デビュー作でこれを撮り、この作品を文字通り死守したフー・ボー監督への敬意を込めてこのレビューを書きました。

以下、簡潔だけど、とても共感した作品コメントをネットから引かせて頂きます。

"全編を通して驚くべき緊張感を生み出している。助け合いや思いやりによって、欲深さや利己心に抗おうとする現代の私たちの人間関係についての美しい映画だ。" ージャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

余談:
映画観ても'感動した'とか'面白い'とか感想をあまり口にしないパートナーが「久々にいい映画観てきた」と満足そうにしてたから、絶対いつか見ないとと思ってたやつ。謝謝🙏
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