緩やかさ

象は静かに座っているの緩やかさのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.5
濃密な4時間。
非常に特徴的な独特すぎるカメラワーク。
(登場人物が見ているものが映画の観客にはっきりと認知できない)
(観る者が想像で補う要素がとても多い)

ずっと長回しで撮っていて、とてつもなく緊張を強いられるので、いつのまにかこの作品の世界に没入していた。

観終わった今はロスさえ感じる。
もうこの監督の新作を観ることはできない。


序盤はなんの話かわからず、ブーの話は不良兄の少年時代の回想シーンだと思っていた。

ブーの親友が、大人になって不良兄の目の前で飛び降りたのだと思い、この一件を掘り下げていくのだろうと想像していたら全然違った。

中盤でようやくブーと不良兄が同じ時系列のフレームに収まるのでこれがある一日の話だとわかる。

人物を背後から追う撮影が多く、一日の話なので終始ブーの寝癖がかわいい。


その濃密さがラスト30分で薄まったように感じた。
登場人物たちが象を見ることを求めて行動し、旅をするという部分にリアリティが欠けていた。
これだけの人生を生き、この一日を過ごした上で、座っている象を見に行けばなんだというのか。

それと親友の拳銃のシーンが(フレームの外なので想像するしかないが)著しくリアリティを欠いた。

(それと、不良兄と訣別を宣言する彼女、このカップルめんどくさい)


終盤で物語的な必然を失うためフワッとした帰結となるが、
もしそうではなく全てのピースがカチッとはまるようなラストだったら、とても苦しい作品になっただろう。

地面に叩きつけられるようなラストではなく、軟着陸あるいは投げっぱなしの結末のせいで、ずっとこの世界の一日を彷徨っているような気分のままだ。
緩やかさ

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