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象は静かに座っているのレクのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.4
圧巻の234分!
暗く閉塞的で死臭の漂う男女たち。
身近な死によって人の弱さや愚かさが表面化され、嘘や責任転嫁はそれぞれの人生を幾重にも重ね複雑に絡め合う。
これぞ、群像劇。
これぞ、運命の交差。
軋み音を立てて崩れゆく人生の中で、歩みを進めること、生きることを学ぶ。
そんな彼らが共通して持つ象という存在とその目的に僅かながら希望を灯す力作だ。

29歳の若さでこの世を去ったフー・ボー監督。
自然光の美しさ、世界に惹き込む長回し、心を揺さぶる一つ一つのショット。
魂を紡ぐ類まれな映画表現と全編を通して纏う不穏な空気。
今、これを観ずして、何を観るのか。
絶望的な崩壊が、これまでにも美しい輝きを放つのだから。

ハンガリーの鬼才タル・ベーラを師と仰ぐ彼の"もう二度と観ることができない"2作目を観てみたいと思わせる魅力が詰まっていた。
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