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ウエスト・サイド・ストーリーのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

4.1
『時を超える映画体験』


1961年版「ウエスト・サイド物語」との最大の違いはカメラワークとダンスのコレオグラフィーであった。
舞台の延長線上にあった前作に対し今回の「ウエスト・サイド・ストーリー」ではカメラが目まぐるしく動き回ることでより躍動感に溢れる画面を創っているし、ダンスは前作の様なコミカルな味わいや優雅さには欠けるものの格闘技的な動きを取り入れたりと、よりアグレッシブでエキサイティングなアクション芸へと変貌を遂げている。

だが、既視感は否めない。

例えばマイケル・ジャクソンのMV「Beat It」(1982)と「Bad」(1987)、ウォルター・ヒル監督の映画「ウォリアーズ」(1979)等で我々はこのようなよりドラマティックな種族間抗争や戦闘的群舞の映像体験に既に慣れ親しんできたからである。

上記の3作品はいずれもオリジナルの「ウエスト・サイド物語」の影響の下に創られたものである。(マイケルの「Beat It」https://youtu.be/oRdxUFDoQe0 はもちろん「ウエスト・サイド〜」のセリフから引用されたタイトルである。)

そう考えると、旧ウエスト・サイドが二次創作を経由して新しいリメイクに影響を及ぼしている訳で、進化というよりは孫作品を目の当たりにする様な時間の超え方が面白い。


もちろん内容的にも申し分のない最上級の作品であった。
中でも我々にとってトラウマ級の暗澹たる記憶であったジェッツのメンバー達によって凌辱されるアニタを前作でアニタ役を演じたリタ・モレノ自身が60年の時を経て救出する場面は時を超えて前作とリンクするアクロバティックな伏線の回収であった。

そして、そのリタ・モレノがこの映画の最大のテーマと言っても過言ではない「Somewhere」を歌うのを聴きついに落涙してしまった。


このように、時を超える映画体験が感動をより趣深いものにしてくれていたと思う。
当然スピルバーグはそれを狙ってやっている訳でまんまと老獪(ろうかい)な監督の術中に嵌められたわい!という鑑賞1回目の今の気分である。


ただ、マリアのキャラになんか腹立つとかトニーはちょっと目つきがストーカーっぽくてしかもすぐ人を殺しそうになるサイコな木偶(でく)の坊みたいでキャラ設定が気持ち悪過ぎるとか、やっぱりスピルバーグはラブストーリーが苦手なのだろうかという疑念を抱かざるを得ない演出には文句をつけ出したらきりが無いのでこの辺でやめておくことにしよう。

↓これも「ウエスト・サイド物語」の影響のもとに創られたMVのひとつ☆(ロザンナとは、ロザンナ・アークエットがモデルらしい)
Rosanna / Toto
https://youtu.be/qmOLtTGvsbM?si=kAAAgMR1_t5ZOLPr
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