ブラックユーモアホフマン

ウエスト・サイド・ストーリーのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.4
今こそ作られるべき、観られるべき映画。
普遍的名作はいつの世にも通じるものがちゃんとある。

もちろん当初はアメリカ国内における分断を意識して企画が開発されたことだろうと思う。当然、依然続くその問題に対してもメッセージを投げかける作品だと思うが、”縄張り”を巡って対立するグループが引き起こす悲劇の物語は、今ウクライナで起こっている戦争にもきっと通じているものだと思う。結局、戦争もこういうことの延長に過ぎない。

マッチョイズムなんて本当にくだらない。くだらないが根深く、厄介なことに感染力が強い。人間は弱く、いとも簡単にこの病気にかかってしまう。
なぜ自分たちの方が強いのだと、他者に対して誇示しなければならないのか。頬をぶたれたら、相手の頬をぶち返すんじゃなく、もう片方の頬を差し出せよ。それが本当の強さだろ。しかし事態が複雑になればなるほど、引くに引けなくなって、これができなくなる。

映画としてはそりゃ最高峰によくできてるさ。だってスピルバーグだもの。でも脚色がどうなんだろう。最初の映画版を一度観ただけで、舞台版は観たことがないくらいの知識しかないけれど、省略の仕方がこれで良かったんだろうかとは少し感じた。
古典中の古典だから皆どんな話かよく知ってるでしょ?というスタンスに感じた。だから全くの初心者には少し不親切な作りかもしれない。もちろん十分理解できるようには作られてるんだけど。最初の映画版の方がより丁寧な作りだったとは思う。ので、先に観ていて良かった。

スピルバーグは、決闘の後のシーンにより重きを置いたのかなと思った。確かにその意図も分かるけど、悲劇性をより高めるためには闘争の前のもっと何でもないシーンこそがきっと大事で、そこをもっと長くやっても良かったのかなとは思った。とは言え、これでも157分。クレジットの長さを考えるとほぼ最初の映画版と同じ尺。切れるところまで切ったんだろうことは分かる。

しかしトランスジェンダー男性と思われる彼、そういえばオリジナルにもいたよなと思い出して改めてその先見性に驚いた。彼は本当に重要なキャラクターだ。彼がいることでこの話がただの人種対立の話のみに留まらない。”仲間”として認められた時の彼の笑顔が、複雑な背景を湛えていて趣深い。

トニーが働いてる商店のオーナーって元は男性じゃなかったっけ?勘違いだったらアレだけど、これも良い改変だったと思う。

→追記:オリジナルの店主がドクで、本作では彼は亡くなって奥さんのバレンティーナが継いでいるという設定になっている、と。そしてそれを演じているのが一度目の映画版でアニタを演じてアカデミー助演女優賞を受賞したリタ・モレノだったわけだ。

ちなみにコリー・ストールはすごく好きな俳優なのでもっと活躍してくれたら良かったのにと思った。ブライアン・ダーシー・ジェームズ良かったですねぇ。

【一番好きなシーン】
マンボ!やっぱアガる。演出も撮影も編集も冴え渡ってたなぁ〜。