Keiko

キャッツのKeikoのネタバレレビュー・内容・結末

キャッツ(2019年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

舞台『キャッツ』は、素晴らしいミュージカルだ。
それは大前提として。
これは……完全に映画化失敗では??

舞台と映画は、度々お互いにアダプテーションされる媒体だ。スライドがうまくいくと最高のエンタメに昇華できる。
特に映画→舞台は成功する場合が多い。ただ、舞台→映画は、かなり難しいと私は思っている。例えば映画版『レミゼ』も『オペラ座の怪人』も『RENT』も素晴らしいんだけど、舞台版との間には、絶対に越えられない壁があった。
それは、根本的に映画と舞台が異なる芸術であることを意味している。表現の幅も、それぞれの得意分野もまったく違う。『キャッツ』では、それが如実に現れてしまった。

例えば舞台は比喩表現が得意だ。コップ一杯の水がプールにも海にもなるし、人間が動物や、時には愛や死といった抽象概念を演じることもできる。
その特性を活かした『キャッツ』は、あえて演出に余白を残してあり、そこを埋めるのは観客の想像力だった。

舞台と映画の違いはそこなんだよ!!!!

舞台は見たい箇所を自分で選択して見られるのに対して、映画はスクリーンいっぱいに「見るべきもの」が提示される。
そしてそれが、見たくないものだった場合は……

舞台版キャッツのキャラクター造形だって、本物の猫とは遠かった。それは人間が演じているから仕方がない。だとしても、映画版のキャラクターデザインは、どうしてあんなにも気持ち悪いのか?
特殊メイクに毛皮のレッグウォーマー等、全体的にふさふさの毛をまとった姿が舞台版キャッツの猫たちだ。
映画版の猫たちは、CGと実写の合成によって、まるで全身タイツの人面猫だ。これが不気味すぎて、どうにも私は集中できなかった。

あと、キャッツってそもそもストーリー重視というよりは、ストーリー付きのショーパフォーマンスと言った方が適切な作品のはず。これも、舞台では強いが映画に弱い。

歌は上手いのに、映画としての演出が下手すぎて、あの「Memory」でさえ盛り上がりに欠けていた。(グリザベラを演じているのが、『ドリームガールズ』でエフィを演じたあのジェニファー・ハドソンだというのに!)
キャストが豪華なだけに、本当にもったいない作品だった。

この映画だけを見て、『キャッツ』というミュージカルは大したことがないと思う人が増えていないことを願う。

ちなみに、何年も前からずっと楽しみにしていたミュージカル『ウィキッド』の実写映画化の計画が、この『キャッツ』が優先されたことにより消滅したというニュースを見て、かなりがっかりした。
スタッフのキャリア的にも、絶対にウィキッドの方が勝てる仕事だった思う。『オズの魔法使』から派生した『ウィキッド』の方が、絶対に映画との相性もよく、万人受けしたはずだ。
Keiko

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