朝田

サバイビング・デザイアーの朝田のレビュー・感想・評価

サバイビング・デザイアー(1991年製作の映画)
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アップリンク吉祥寺にて短編と共に鑑賞。ハルハートリーの作品は初鑑賞だったが、とても素晴らしかった。初期ゴダールのポップさとジャームッシュのような簡素さが融合していた印象。ストーリー自体は教師と女の生徒の恋愛を描いたごくシンプルなものでありながら、ハートリー独自のアイディアが細部まで施されているため、極めて新鮮な作品に仕上がっている。まずカット割りのリズムが心地好い。冒頭、教室内で本を読んでいる教師と女の生徒が捉えられたカットから、本をパタンと閉じた瞬間に次のカットへと移行する。また別の生徒が教師に向かって悪態をつき、怒った教師がその生徒を黒板に押さえつけた瞬間に、カフェに友人と共に入っていくカットに変わる。こうしたリズミカルなカット割りが貫かれるため、時折用いられる長回しが効果的に作用する。部屋の中で、女生徒と教師が二人きりで会話するシーンでは、それぞれの表情を捉えたカットがシンプルに切り返される中で、そこからキスをするシーンだけはカットを割らずに捉えられる。こうしたカメラワークの緩急によって単純なキスシーンがドラマチックに演出される。リアリティーを重視したミニマルな世界観の物語が語られていく中で、ファンタジックな飛躍が起こるのも楽しい。特に教師が女生徒とのキスを終えた後、唐突にミュージカルのようなダンスシーンが始まるのは、教師の中の色めき立つ感情を描いた名シーンと言える。その他にもスローモーションを用いたりといった遊び心が詰まっている。音楽もセレクトのセンスの良さ(冒頭でかき鳴らされるギターリフのカッコ良さ!)もさる事ながら、要所要所で無音のシーンを用いる事で単調さを避けているのも巧み。メアリーウォードの、ゴダール「勝手にしやがれ」におけるジーンセバーグのような小悪魔的なチャーミングさも忘れ難い。あんな蓮舫みたいな髪型でちゃんと可愛いのが凄い。もっとハートリーの作品を見たいと思わされる優れた一作だった。
朝田

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