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私、オルガ・ヘプナロヴァーのbennoのレビュー・感想・評価

3.9
チェコ映画界の新鋭トマーシュ・バインプレとペトル・カズダ監督…ドキュメンタリー風のリアリズムによるデビュー作品です…。

『サイコパスでも、私には見識がある…いつか嘲笑と私の涙を償わせる』

実在した22歳の死刑囚、オルガ・ヘプナロヴァーを描いた作品…何が彼女を恐ろしい凶行に駆り立てたのか…??


13歳の頃から鬱病に悩まされるオルガ(ミハリナ・オルシャンスカ)…薬のオーバードーズで自殺を図り、家族は彼女を精神病院へ追いやります…。

比較的裕福な家庭でありながら…DVの父親、ネグレクトの母親、殆ど会話のない姉…彼女は一家の黒い羊…。

そして精神病棟でのいじめ、集団リンチ…そこでも彼女は異質な存在…。

退院後はトラック運転手の仕事を始め、そこで目覚めた同性愛…しかしその愛も長くは続きません…。

自らを「性的障害者」と呼び、人間関係を築けない…人々に壊された…選択肢は自殺か殺人…??

彼女の中で鬱積したものは次第に他者への不満へと向かっていきます…。


  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜








とても美しい顔立ちですが…猫背でガニ股…タバコを持つ手からも透けて見える男性性のメタファー…自分を大きく見せたいのか…後に語られる父親への憧れなのか…しかしどこと無く頼りなくもあり…自分を誇示する気持ちと自分らしくありたい気持ちが常にせめぎ合ってる風にも見えます…。

映像も実に巧妙でモノクロでありながら、グレートーンが強く…どこかソリッドで冷たい…オルガの心は勿論、人々の気持ちも寒々しく、人間関係の希薄さが読み取れます…。

自殺の代わりに他者を殺害することが社会への復讐…社会から孤立し、自分の中で危険思想を育ててしまい間違った方向に矛先を向けてしまう…しかし実際に日本でも同じような犯罪は存在し、だからこそ無差別殺人は無くならない…。

オルガには全く共感出来ないですし、それこそが彼女が孤立した要因でもあるように思えます…。

絶対に許されない犯罪!!

ただ、彼女を生み出す一因として、周りの大人や社会そのものがあることも忘れてはならない…。

この世に生まれ落ちた時はみんな天使だったはず…。


thanks to; 寅次郎せんせー ꕀ𖤐˒˒
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