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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのSGRのレビュー・感想・評価

4.0
まず、上映時間の長さは感じない。ただどちらかというと"事実"に考えさせられる部分が多く、映画自体は淡々としていて「ここが見せ場」という印象的なシーンがあまり感じられず、個人的にはむしろ若干物足りなさが残るくらい。

それでもこの題材を映画として知れることと、キャストの演技だけで十分3時間半かけて観る価値はあります。

あと大きな山場を作ると言うより、ジワジワと時間をかけて白人側が潜在的に持つ特権意識を描いていたのが印象的。先住民との間に生まれた孫を「どちらがより白人に見えるか」「先住民の野蛮な血」など会話するアーネストの両親(?)、「先住民を20世紀に連れてきた」と言うデニーロ、白人の医療を黙って受けろというアーネストなど…

1920年代にお金持ちの先住民と彼らに使える白人たちという逆転構造があったと言う事が驚きだけど、既存のシステム(資本主義)の中でマイノリティが勝ち抜いても、結局システムを作った側に搾取されてしまうという構図。そして残念ながら今の世界のシステムを作ったのは白人であり男性であるということ。だからどんなにそのバックラッシュが起きて「逆差別」だ「ポリコレ」だの言われる事があっても、システムを作った側が白人や男性であり、その優位性は揺るがないという事を考えさせられた。

普通はテロップなどで説明される"後日"の描き方も、結局この実話が単純に特権層に消費されて終わる事への警鐘だと思う。
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