柏エシディシ

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの柏エシディシのレビュー・感想・評価

4.0
いつも通りの罪と贖いのスコセッシ映画でいつも通りに最高なのだが、御年80を越えて更なる進化と深化をも感じさせて最高、でもあるという。
3時間を越える長さを一切感じさせない、面白さ。
お話としての顛末も終わってみれば目新しくないのだが、映画としての基礎体力がもう根本から違うから、それだけでグイグイ引き込まれてしまう。
それでいて、エピローグ後日談の演出のフレッシュさに驚愕!
そして、とにかく出てくる人物がキャラクターというより"人間"としての説得力がすごい。ついに新旧スコセッシスターの夢の合体、デニーロ/ディカプリオ。美しきリリー・グラッドストーン。そして端役に至るまで、良い顔のメンツ。
映画は、こんなことも出来るんだよ。
映画は、役者の演技を堪能するものなんだよ。
映画って、凄いだろ?と言われている様だ。

ディカプリオ史上、最も愚かで情けないディカプリオ。
しかし、それが最高に可笑しくて、哀しい。
ホントお前さ…?って何度も思わされたけど、でも、人間、実際こんなモンという妙な説得力もある。判ってはいるけれど、堕ちることをやめられない。

例によって、女性キャラクターの描き方が一面的であるのと、やはり白人の視点からの歴史観から脱却していない謗りは免れない様に思うが、しかし今時分においてこのテーマで、この様な大作が撮れて、しかもべらぼうに面白い映画なんてスコセッシにしか撮れない。
スコセッシ、少なくともあの20年ぐらいは映画を撮り続けて欲しい。

最後に、ロビー・ロバートソンの劇伴が、もう、素晴らしい、としか言えない。
劇場のスピーカーで味わうべき。
彼の出自とネイティブアメリカンカルチャーのロック史における存在の重要性は、ドキュメンタリー映画「ランブル」に詳しいが、人生の最後の仕事が本作であることに運命的なものを感じてしまう。
本作そのものがスコセッシの盟友へのトリビュートでもある様に思う。
柏エシディシ

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