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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのtomozoのレビュー・感想・評価

4.6
スコセッシ監督にロバート・デ・ニーロとレオナルド・ディカプリオの共演と言われれば見ざるを得ない。期待しながら鑑賞をしたけれども、2人の俳優の演技合戦は、充分満足のできるものだった。

近年デニーロの演技は、ややオーバーアクト気味だったが、この映画では、むしろその胡散臭さ(褒めてます)が効果的で、オセージ族に対して、手厚く友情を示すと思えば、その裏で自分の利得のためなら、なんでもするという二面性に、よりリアルさが出ていたし、ディカプリオ演じるアーネストが、デニーロ演じるヘインに翻弄されてしまうのも納得がいく。この映画のキーマンはヘインなのである。

ケビン・コスナーのダンス・ウィズ・ウルブスを見たときに、ブームが起こり、ネイティブアメリカンについていろいろ調べたけど、実際、土地を奪われたインディアンが、何百キロも徒歩で移動しなければならなかったり、酒の文化がなかったために、アル中が激増してしまったり、領地で金鉱が見つかったために、その領地を明け渡さなければいけなかったり、その辺の受難は、ウィキペディアなどを一読するのをお勧め。実話なので 少しでも知ってみた方が絶対興味深い。

ただこの映画は、それらのインディアンの歴史的な部分を描いているだけではなく、この映画の主題は、人間の複雑さではないかと思う。実際の話生きていくためには、1つの信念をずっと貫き通すと言う事は難しく、特に自分に何も持たない人間にとって、周りに流されてしまう。もしくは巻き込まれてしまうというのは容易だ。それこそお金であったり、権力であったり。

そんなアーネストが堕ちていく様を、まるで整形したのかと思う位、表情をコロコロと変えていくディカプリオの演技は、まさに絶品。

加えて、対照的な、物静かでありながら、がっちりとしたモリー演じるリリー・グラッドストーンの素晴らしいったら。最後まで感情に流されない彼女の姿は、強い人ってこういう人なんだなぁとしみじみ思った。

相変わらずスコセッシはちょこっと出てくるしお茶目だけど、まだまだ衰え知らず。そして、長さなんて気にならない位俳優たちの至高の演技が見れる最高の映画でした。
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