よしおスタンダード

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのよしおスタンダードのレビュー・感想・評価

4.5
No.3943

「長いなぁ・・と思いながら見ているはずなのに、見終わったら長いと感じていない不思議な大傑作」

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率直な感想としては、『加齢なるスコセッシ一族の集大成映画』・・・これ、誤字じゃないです。

文字通り『加齢の勝利』。

80歳を超えたスコセッシだからこれが撮れた。終始、「人間の悪意」や「生殺与奪」を描き続けてきた巨匠がついにたどり着いた

「こんなに怖い話なのに、語り口が恬淡(てんたん)とした境地」。

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もっとスコセッシが若かったら、あの『グッドフェローズ』のように、生々しくて怖すぎちゃう出来になってたかもしれない

(僕はこれを初めて見た10代の頃、ほんとに怖くてシーンによっては直視できなかった)、

今回の『フラワームーン』だって、陰惨で怖すぎる話には違いないのに、なぜか『グッドフェローズ』とは違う印象を受ける。

そこには、今作に込められた「あれ?スコセッシって、こういう演出する人だったっけ??」という、

今までとはちょっと違ったディレクションのせいもある。

どんな演出、ディレクションなのかは、これは見てのお楽しみですね。

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そして、デ・ニーロがたどり着いた「もはやそこにいるだけで怖い存在」。

これも、彼が80歳となった今だからこそ出せる至高の技だと思う。

もう若い頃のように髪や歯を抜かなくても、無理に体重を増減させなくても、デ・ニーロそのままでその役になれてしまう究極の演技者。

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一方、かつて『ボーイズ・ライフ』で共演したことはあっても、スコセッシ組としてはデ・ニーロと初共演となるディカプリオ。

彼もまた、中年といわれる年齢になってもなお、見るたびに引き出しが増えていくような稀有な俳優だ。

しかし、全身で喜怒哀楽を表現する底知れぬ力強さは『ギルバート・グレイプ』の頃と何も変わっていない。だから常にトップスターなのだ

そんな百戦錬磨の名優たちと対峙するリリー・グラッドストーンがまた凄い!!

この中からオスカー受賞者が出るとすれば、恐らく彼女でしょう。