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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのmarimoのレビュー・感想・評価

4.0
アカデミー賞前に観ておきたくAppleTVに契約しようと思った矢先の2週間限定上映
せっかくなら劇場で観たかったのでありがたい

3時間26分…
ええ、長いですよ
ただね
これだけの長さを気にせずに観れてしまうのは
抜群のテンポと静かな展開も決して退屈にならない演出

さすがの巨匠マーティン・スコセッシ監督
恐れ多いですが…お見事すぎます

題材は歴史から消されてしまった先住民虐殺事件(実話)
過去にも同じ題材を扱った作品はあったが、
先住民(オセージ族)側の目線で語られるのが本作のポイント

制作当初はディカプリオはトム・ホワイト捜査官を演じる予定で進んでいたのだとか
ただ、それだと白人の英雄的な描き方になってしまう
そんな映画いくらでもある

そこでオセージ族の資産を狙って悪事に手を染めてしまう白人アーネスト役をディカプリオに設定
この変更により本作全体の構成が決まったとのこと

ディカプリオ演じるアーネストがオセージ族のモーリー(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち結婚し…そこまでは普通の幸せな話
地元の有力者でありアーネストの叔父であるウィリアム(デ・ニーロ)が唆してモーリーの家族の命を奪っていく

ウィリアムはオセージ族の事を友と語っている
しかし莫大な資産を目の前に得るために手段を選ばない行動にでる

友だと思っている気持ち…おそらく本心

一見サイコパスのようにも見えるそれだが
これはオセージ族に対する無意識な差別や迫害
必ずしも対等な存在とは見れていないのである

アーネストも同様で
モーリーに対す気持ちは間違いなく愛情なのだが…
彼女の家族を殺す計画に関わるそれは
やはりオセージ族に対する無意識の差別迫害なんです

この”無意識”さが本作を通したなんとも気持ち悪い歪さを生み出してる気がします

誤解されるのを覚悟ですごく嫌な言い方をすると
どこかペットに対する愛情に近い感覚に見えてしまった
家族であり大切な存在ではあるのだが
個としての自立を抑制した関係
絶対的な主従関係が存在する状態
(ペットを飼っている方々、気分を害したらゴメンなさい、実家にはお犬様がいる家庭の人間です)

この違和感が同じ人間同士で見えてしまうことが無意識の差別や迫害そのものなのだと

この関係は、ウィリアムにとってはアーネストも同様
叔父でありながら一族の幸福のためにはアーネストの置かれる状況は二の次

欲により内面の愚かな闇が出てしまう人間の狂気

長くて重たそうな映画な印象ですが
この事件が持つ残虐性が薄れることなく
娯楽性の高いエンタメ作品としても成立している凄い作品

この歴史から消された事件が、FBIという組織を生み出すきっかけとなった史実も興味深く
またこのFBIすらも自身の組織拡大のためにこの事件を利用している
それが垣間見えるラストのシークエンスがただただお見事でした
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[劇場]
グランドシネマサンシャイン 池袋

[鑑賞日時]
2024年03月09日(土) 19:45 - 23:21

[作品名]
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン【字幕】

[スクリーン名]
シアター8

[座席]
e-6
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