僕は3度の飯よりデニーロ!の人なんですが、今作はディカプリオの凄さに改めて驚かされました。
もちろんデニーロも素晴らしいです。あの猛獣使い感というか鈍重使い感というか、それはもう素晴らしいんですが、それ以上にディカプリオの演技に痺れました。
彼の無知で間抜けなクズ男っぷりが本当に凄まじく、単純な人で無しとはまた別の「自分で考えることのできない人間」の愚かさがグサグサと自分の弱みを突かれるような気がして、心穏やかにいられませんでした。
3時間26分という長尺ながら、非常にテンポが良く無駄のない作品です。スピード感のあるストーリーテリングやチャカチャカした編集では出せない「テンポの良さ」で、思わず身を委ねて観てしまうような心地よささえありました。
さらに見事なのがFBIの英雄譚をオセージ族側の視点から描いたという点。これもディカプリオのアイディアだったというので、本当に頭の良い役者なんだなと感心させられます。
その結果、白人による搾取とさらにその上で繰り広げられる国家による搾取の構造を俯瞰から見せるという社会風刺に成功していると思いました。
ではその最底辺にいる空虚な男は、愚かな被害者のひとりであったか。彼が保身のために「無知」であり続けたことの罪深さを指摘する視点が本作の最大の見どころだと思います。