よどるふ

幸せへのまわり道のよどるふのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
3.7
トム・ハンクス演じる“子供向け番組の司会者”が中心に据えられることで、「家庭の問題を抱えた人間が周囲と和解していく」というありふれた物語が、一風変わったものとして映る。「他人のために自分の人生の時間を費やすこと」の凄さが伝わってくる。

番組を撮影しているスタジオのシーンが何度かあるのだが、いずれも画面設計が見惚れるほどに素晴らしい。TV番組として切り取っている“画面”と、映画として切り取っている“画面”の絶妙なズレ。静止画としても印象的なところがあるし、ラストシーンも完璧と言っていい。

作品を最初から最後まで一貫した濃度の“ファンタスティックさ”で染め上げるのではなく、場面転換にミニチュア風景を使ったり、撮影スタジオという作り込まれた世界(テレビ番組)と現実の端境を描いたりと、グラデーションの出し方が上手い。沈黙の使い方も贅沢だった。
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